祝子川を堰き止める「浜砂ダム」。少し先に西に切れ込む「桧山谷」がある。出来る限り下からと、ダムへの注ぎ口に入渓すると、伏流水となった河原は石だ
らけである。しばらく歩くと、太い鉄パイプで作られた堰堤に出くわす。左を巻くと、また水の無い河原が続いた。
流れが現れた頃、谷が狭くなりゴルジュを形成していた。当初の水の無い変わら歩きとは違い、遡行そのものが険しくなっていく。泳ぎ、滝を登る。先の見え
ないゴルジュを泳ぐとき、深緑の淵には、何か得体の知れないものが棲んでいる気色さえ感じた。強い流れではなかったが、泳ぎは全身運動で、滝に登り上がろ
うとするとき一気に加重がかかるのは、なんと自重の重い事よ!と、情けなくなる。泳ぎと滝登攀を繰り返し、大きな二俣に到着する。それでも標高は170m
に過ぎない。右俣をコースに選ぶ。ここまでで時間は11時半。
二俣を過ぎてからの遡行は、さらに深いゴルジュが行く手を阻む。どう克服するかを考えるのが、沢登りの醍醐味。少し長いゴルジュは、2時間を費やし。よ
うやく、スケールの大きな20m斜滝を迎えた。左を巻くが、かなり危険な斜面である。行く手を岩壁が立ちはだかり、大高巻きとなってしまう。1時間近くの
巻きで川に戻ると、砂防堰堤の上に立った。ここから、人工物のコンクリートの倉庫みたいなものが正面に見え、右斜面には傍道が入ってきていた。地図には
載っていない道なので、林道は遥か上ということである。水路橋が沢上に架かり、間もなく取水地である。空いた腹を我慢し、その上の砂防堰堤を越す。河原
で、遅い昼食を取りながら、今日の遡行は「ここまで!」と決断した。すでに15時40分。
遡行を断念した砂防堰堤から、林道へ斜面を登る。登る。登る。泳いだ体は、重く、汗が噴出す。斜面は急で、細い自然林がまばらに立つザレた斜面。重い足
を上に持ち上げるたびに、ひょっとして林道は無い?と疑いたくなる。疑うこと40分・・・と感じだが、実際は20分で立派な林道に抜けた。「思った通り
だ!」と、自慢げに駐車位置を目指した。
|