次女の「小学校卒業記念」とか、「中学入学祝い」だとか言いながら、私の満足で次女と女房を連れだしたのかも知れない。しかし、数日前まで「いやだ」と
か「こわい」とか「死にたくない」などと言っていた次女も、そして女房も、前夜には行く覚悟になっていた。
長女は、まだ春休み中だが試験前でもあるし、両親の留守に家を独占できる方が魅力の様だ。長男・次男が登校すると、自宅を出発した。延岡のコンビニで食
料を仕入れる。次女は、グレープ味のハイチューと、ソーダ味のプッチョを手に取った。私は朝飯代わりに、コロッケパンを頬張りながら、運転をする。
登山口駐車場は、今日も貸し切り・・・、平日のクライミングは岩場もいつも貸し切り・・・。次女が車内で聞いていた「北の国から」のCDのおかげで、頭
の中にはさだまさしの「ア〜ア−、アアアア〜」がリピート状態である。皆のハーネスを点検しながら、ギアの確認をする。ここからTAカンテの取り付きまで
は、いきなりの急登であへあへとなる。実にアヘアヘとなる。空身の次女は、ひょいひょい歩き・・・。9mm×2本のロープと水・食料・・・、腰にクライミ
ングギアで10sを軽く越している・・・が、アヘアヘを隠さねば親父の威厳は保てないのである。足慣らしに・・・と、いつもの取り付きより下部IV級
40mでロープをセットする。
次女の登りは、とてもリズミカルである。自宅のボードでの練習通り、スタンスを上手に入れ替えたり、体のひねりを使って上のホールドを取りに行ったり、あまりににもバランス良く登るので後続のママのヨチヨチ登りがウソの様に思えてならない。
核心となる1PのIV+級も、「北の国から」を口ずさみながら上がってきた。私の登り上がったところから逸れ、あわやと思いもしたが、「左??」などと
聞きながら傾斜のきつい所をカウンター気味にトラバースしコースに戻った。私の所までたどり着き、「こうやって何十bおきにお父さんがロープで確保してく
れているし、自宅のボードみたいに反対向きに傾斜していないから、思ったより難しくないわ!」と言った。どうも次女は、1ピッチで上まで登り上がらないと
といけないと思っていたらしい。
軽快にピッチを重ねる次女、ついに最終ピッチを上がってきた。カラスの鳴き声に大声で鳴き返し、小鳥の声に答えていた。風も、光も、草も、木も、鳥
も・・・、そして今登っている「岩」も、彼女にとってはごく身近なものなのかも知れない。生まれたときから親しんできた自然に包まれ・・・水を得た魚なの
だろうか?終始「北の国から」のハミングは続いていた・・・。
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