水流渓人「hot-news」

2003年11月24日 「市房山の九合目/家族登山」熊本県

 
  

 
 祝日がやってきた。土日仕事の私としては、この日を逃すとなかなか家族で山頂に立つ機会が無い。ましてや、子供4人の6人家族であり、6人6様の都合も重なる。子供達の成長と共に、その都合も説明を受けてしまえば、いつもの親父のわがままだけでは押し切れない事もある。9月23日「五葉岳」10月13日「天気が悪く、近場でボルダー」だった。それも、「嫌々コール」も囁かれる中での家族行事であった。11月3日に関しては、私の所属する山岳会の例会山行担当となり、家族そっちのけで私だけが比叡入りした。翌朝はザァーザァーザンザン降りで帰宅したが、突然の親父飛び入り参加のゲーセン遊びは、子供に白い目で見られてしまう事となった。今回は、子供の間でも「登山」なのだと言う雰囲気が出来上がっており、実にすんなりと当日を迎えることが出来た。
   

西都市銀鏡入り口付近から「烏帽子岳」 なんと「林道崩壊通行止め」看板(-_-#)
 

 ちょっとした寒波で、阿蘇に初雪の情報・・・「霧氷」を期待する計画となった。いつかそのうちに・・・と、あまりにも近場なので先送りにしていた「石堂山」へ行くことにした。5時起きで弁当を準備、6時20分出発・・・コンビニで子供楽しみ「100円限定菓子購入」・・・、走り慣れた国道219号線で西米良村村所を目指す。10年前に比べるとトンネルが増え、15分程度の短縮である。村所で椎葉方面へ右折すると、井戸内峠方面へ右折である。井戸内には、かつて民家を借りていた時期があり、雑木で建てた民家へ週末には家族で泊まりに出かけ、川遊びや渓流釣りを楽しんでいた。
 なんと、井戸内へ右折の道路脇に「石堂山登山者の方へ・・・林道崩壊のため通行できません。」との標識が立っていた。標識を疑い近くまで確認に行こうとも思ったが、時間のロスにもなりかねないし、村所から人吉方面なら30分で湯山、「白髪岳」か「市房山」へと変更した。「霧氷」でも・・・との当初の計画と、家族全員で山頂に立っていない山と言うことで「市房山」方面へ右折する。

 
宮崎と熊本の県境となる「横谷トンネル」を抜けると、湯前町に雲海が広がっていた。
登山口

市房神社への参道となる登山道には、巨木がたたずむ。

     

市房神社にて、「飴」を分配している(^^ゞ 6合目付近の水場
       

  市房キャンプ場から見上げた市房山は、山頂付近だけがちょこっと雲に覆われている。登山口付近で5℃程度なのでひょっとしたら・・・とも思うが、登山口にいらっしゃった監視員の方の情報では、霧氷はまだの様だ。身支度を整え、登山届を記入する。
 「市房神社」への参道にもなっている登山道は、何度来ても素晴らしい。巨大な杉、脈々と時代を見つめてきた荒々しい枝振りに圧倒されてしまう。そして、それを守り続けてきた人達がいるという素晴らしさである。「市房神社」で一呼吸入れて、ゆっくりゆっくり高度を上げていく。この山は、4人で2人で登っている。それぞれに印象深い山行であり、いろんな感動的をもらう山でもある。顕著な尾根道をたどりはじめると、しばらくで「水場」を迎える。遠く沢音が聞きながら喉を潤すと、森に吹き渡る風の音にも気が付く。水場のから大岩の裏手に回ると、水上村が眼下にひろがり巨木の松と合い重なりなんとも素晴らしい風景である。しかし、反面足下から斜面を見渡すと、おびただしい紙が散乱している。糞尿をまき散らし、それでも飽きたらず分解しないティッシュやゴミの見苦しいこと・・・、登山者のモラルの低さは怒りと悲しさである。

  
水上村方面、えー眺めじゃのぉー!
   
ヒメシャラの林 ブナの林

「市房山」1722m
 

 急登が過ぎると、ヒメシャラの森が出迎えてくれる。それからだんだんとササを広げたくましいブナ林が続く・・・。野鳥のさえずりを聞きながら、最も市房山で好きな空間である。ママの体調がすぐれないので、ママの荷物も私が少し担ぎ、18sを越す荷物は1ヶ月ぶりの山行にはやはりきつく、スローペースが続き、9合目手前で12時を回ってしまった。おにぎりを食べ少し休んでみる。ママの顔色が悪いが、そこからの登りは大したものでないことは、彼女も以前の経験で知っているはずなので山頂を目指すことにした。しかし、ママは9合目の標識で、ピタッと停止した。リュックを降ろし「止めっ!」と宣言した。私もそれ以上は強要しない。なぜなら、彼女が簡単に根を上げる性格でないことは良く知っているからだ。よほど体調がすぐれないのだと判る。皆、リュックを降ろし空身で山頂を目指した。山頂標識で集合写真を写すときも、なんだかさえない感じで景気を楽しむわけでもなく、次男の「お母さんがいないと楽しくないねぇ・・。」と言った一言が、すべてを語っていた。3分と居ない山頂は、家族の居場所では無かった。疾風のように下山し、母の待つ9合目に駆け下りていった長男。私達の到着を待って、9合目下の広場で本格的に昼食休憩をする。

この森を眺めながら、昼食をとる。青空と小鳥のさえずりと・・・家族。
 

 コンロでお湯を沸かし、皆でラーメンをすする。いつものように、落ちている木やササ竹を使って、なにかごそごそ作り遊び始めた次女・長男・次男。マットをひろげて昼寝を始めた長女。ママの具合を訪ね、顔色を確かめてみる。どうも左足がしびれてしまい、感覚が無くなるほどだったそうだ。家族で一緒に何かする事が大切で、山頂が大切ではない事は誰もが判っている。願わくば、ママの腰痛が治ってほしいと思った。もう私は、いつでも家族でのスタイルとしての登山に終止符を打つことは、さほど努力は必要ないとも思っている。「楽しみ」は、登山だけでなく、どんな事柄からも見つけることは可能だし、要は「家族」と「楽しもうとする気持」が大切なのだから・・・と考えていた。「いつまでここに居んの?そろそろ下山しなくてええの?」とママに聞かれるまで、私は遠くに野鳥のさえずりを聞いていた。

  
巨木をぬって下山 登山届けに下山報告ヾ(^^ )

市房キャンプ場から夕焼けが見えた。
  

 久しぶりの山歩きと、思わぬボッカとなってしまった私は、少し膝が痛かった。でも、気持が満たされていて、何度も子供の位置を確認しながら、ママの歩きを確認しながら歩いていた。家族を近くに感じるために始めた山登りである。すでに、たくさんの「大切な宝物」が家族の中に貯まっている。帰路に、「温泉に行く?」「食事はどうする?」と子供達に聞いても、いつも「家がいいに決まっている!」と答えてくれる。ママは痛む足と腰のまま、遅い夕食を作ってくれた。まずかろうはずがない。食卓で、私はまだ子供の位置を確認しながら、ママを眺めていた。家族を感じていた。

 
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6:20自宅発----6:38コンビニ発----7:45井戸内「通行止看板」---8:30市房キャンプ場--9:10登山開始--9:30市房神社--10:45水場・6合目付近--12:20九合目付近で休憩--12:55山頂--13:15九合目付近で昼食----14:20下山開始------16:55下山終了----18:50自宅着

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