2002/02/13

熊本県

 

貴方は もう忘れたかしら 赤いてぬぐい マフラーにして
二人で行った 横丁の風呂屋 一緒に出ようねって 言ったのに
いつも私が待たされた 洗い髪が芯まで冷えて 小さな石鹸 カタカタ鳴った
 貴方は私の からだを抱いて 冷たいねって 言ったのよ

若かったあの頃 何も恐くなかった ただ貴方のやさしさが 恐かった

貴方はもう捨てたのかしら 二十四色のクレパス買って
貴方が描いた 私の似顔絵 うまく描いてねって 言ったのに
いつもちっとも 似てないの 窓の下には神田川 三畳一間の小さな下宿
貴方は私の指先見つめ 悲しいかって きいたのよ

若かったあの頃 何も恐くなかった ただ貴方のやさしさが 恐かった

 「市房山」への山行は、前夜に突然決まった。私が帰宅すると、次女が落ち込んでいた。どうも自分の性格が嫌になり、こういうときは自然に触れてみるのがいいと言う。それならば・・・と言うことで、彼女の学校自主休校を認めてあげた。
 自宅のある西都市から「市房山」の感覚は、どうも裏山的感覚である。ひょいと簡単に・・・と言う意味ではなく、「石堂山」「天包山」と合わせて、「米良三山」と崇められている。生まれ育ってその懐にいるって感覚なのである。

 登山口は、最終地点・・・市房神社鳥居のある所から、約180b上の高度、いわゆる3合目の地点である。しかし、お得な登山口といえども、そこから山頂は、高度差950bを登らなくてはならない。しっかりとしている登山道が山頂を近づけているだけである。
 結構冷え込み、登山開始時点での気温は−3℃。少し着込んで、樹齢1000年を誇る老杉を参道にたたえた「市房神社」を目指した。

参道には老杉やケヤキの大木がデンと構える。
      

市房神社

 市房神社は、俗に「お岳さん」と呼ばれています。創建は、文同2年(802年)と伝えられ、相良家代々の祈願所となっています。
 本殿の他、拝殿などがあります。参道の両側に林立している老杉は樹齢1000年を越しているといわれます。
(案内板より)


5合目付近の「佛岩」

4合目付近から、江代山


6合目の水場は凍てついていた。

九州中央山地国定公園「市房山」
 熊本県の最高峰、市房山(1722m)雄大な原生林が今も生き続ける奥球磨の探勝地。
 国指定の天然記念物ゴイシツバメシジミチョウが生息し、5月中旬には、ツクシアケボノツツジが咲き誇り、山頂からは、雲仙、阿蘇山、祖母山、霧島連山が一望できます。
(登山道途中にある看板より)

 

霧島山が望める


 次女・・・、彼女といると、自然が語りかけてくる。伐採のチェンソーのエンジン音におびえた。木が倒れる音を聞くたび、小鳥たちを心配していた。鹿もキジもアオゲラもシジュウカラも、彼女のスグ近くに姿を見せた。枯れ草を手でつぶして匂いを楽しみ、雪が氷りになっている上を上手に滑った。いつしか、彼女の口笛に小鳥たちが答えているように聞こえた。なんの違和感もなく、森に溶け込んだ。道の無い場所を歩いても、いつの間にか登山口へ導いてくれた。たくさんの触れ合いをして、帰路、彼女は眠り込んだ・・・・・。


市房キャンプ場より「市房山」を望む・・・

おっと、書き忘れてはイケナイ。タイトルの「神田川」。次女は、現在4年生。もっぱら、性格は特異的である。私や女房の、「かぐや姫世代」は、未だにその頃のフォークを聞くことが多い。最近、家族全員でくちずさむのが「神田川」・・・、別段、市房に関係ないような気もするが、今回の山行のBGMは、終始、次女の歌う「神田川」であった。
「お父さんとお母さんは、赤いてぬぐいをマフラーにした?」
「お母さんの体を、冷たいって言って抱きしめたことある?」
「お父さんとお母さんも、若いときは怖いものは無かった?」
・・・・ここらの質問までは、良かった。しかし・・・・
「お父さんは、何歳ぐらいの頃が、女の人にもてていた?」
「お父さんは、荷物ぐらいしか持てないよぉ〜。」
「ううん、そんなことじゃなくて、お母さんとつき合っているのに、他にも2人も彼女がいたって話の事よぉ・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「お母さんは、なんで、そんなお父さんと結婚したんやろ?」
「・・・・・・・・・。」
ママちゃんは、そんな話までしているんだなと思った。ふと、気がつくと、確かに私は、次女と市房山の登山道を歩いていた。まるで、ママちゃんと歩いているような錯覚に陥った瞬間である。

やはり「若かったあの頃 何も恐くなかった  ただ貴方のやさしさが 恐かった」の世界だったのか、背後に誰か立っていないか、振り返って歩く私がそこにいた。

全行程7時間(休憩を含む)
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