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投稿レポート

西都山岳会「剣岳(2,998m)

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女性会員10名剣岳レポート

平成12年 8月11日〜8月15日

女性10名(中村,杉谷,羽田,中武,阿万,米田,実広,倉永,青島,浜砂)

行  程 8/11 西都15:00-宮崎空港17:00-大阪空港18:00-難波21:50発(バス車中泊) 

8/12 室堂7:40-雷鳥平8:10-新室堂乗越分岐9:03-雷鳥沢9:25-剣御前小10:25-剣山荘11:45(泊) 

8/13 剣山荘4:05-武蔵谷鞍部4:40-前剣5:30-平蔵のコル6:26-カニのタテバイ6:55-剣岳山頂7:40-カニのヨコバイ8:40-前剣9:30-剣山荘11:05(剣沢方面経由)-剣沢雪渓12:05-真砂沢ロッジ14:20-二股16:00-仙人池ヒュッテ19:00(泊) 

8/14 仙人池ヒュッテ5:35(仙人谷雪渓)-仙人温泉7:35-阿曽原峠9:15-阿曽原温泉9:20-折尾谷出合12:45-大太鼓14:00-志合谷トンネル14:15-欅平駅16:30-宇奈月温泉19:48(泊) 

8/15 宇奈月10:45-富山地鉄-富山11:49-北陸本線-大阪駅15:36-大阪空港18:40-宮崎19:50着

 8月11日 15:00西都を出発。宮崎空港17:00発大阪行きの飛行機に、10名全員がにこにこ笑顔で乗り込んだ。1時間後、定刻どおり大阪空港に到着するが、ものすごい雷雨で空港側の作業が危険なために飛行機を降りることが出来ない。窓を激しく打つ雨音にまじって「あ〜あ」のため息がもれる。台風9号が北上中で、まともに来れば中部地方を直撃する。なんて幸先が悪いんだ。30分を過ぎてやっと降りることが出来た。大阪空港からバスで、なんば『オーキャット』バスターミナルに19:30到着する。そこで、メンバーの一人である杉谷さんと合流し、美味しいひれカツを夕食に食べた。空港での雷雨が、まるで嘘のようになんばのバスターミナルの地面は乾いていた。
21:50室堂行きの高速バスに乗って朝までぐっすり?座席はバスの最後部でリクライニングできないが、前の席との間が広く足を思い切り延ばす事ができた。皆それぞれ寝やすい体制で横になり、誰かは通路でグーグー寝ていた。

 8月12日 7:00室堂バスターミナルに到着し、7:40剣岳に向けて出発する。見渡す限り残雪抱く山また山のパノラマを背景に、みくりヶ池を見ながら歩く。そんな中、剣岳も大きくそびえている。空は晴れ渡り、すばらしい風景に見とれながらゆっくりと歩いた。雷鳥平から雷鳥沢の斜面が段々ときつくなる。はるか彼方、山の稜線に剣御前小屋が小さく見えた。「あそこまで登るよ!!」「ゲェ〜」誰かが言った。
「宮崎からわざわざ登りに来たんやろ!!」一発目の発破をかける。予定通り2時間45分で剣御前小屋に到着。しばしの休憩後、小屋から剣沢雪渓、剣沢小屋、剣岳を前方にルンルン気分で雪渓をスライドしながら、約1時間ひたすら歩いた。何しろ、正午までに剣山荘に入らないとその日のうちに剣岳を登ることが出来ないからだ。結果、15分前に到着した。
 到着するや否や急いで必要最小限の物品だけリュックに入れ替えていると、ホーキを持った山の主?が、「今から登るのか?今日は止めた方がいい。明日、朝早く登れ。」と。
翌日の天気を心配しながらひきつけ笑いで、「今日は止めます。明日早く出発しますわ。」と素直に返答する。主?さんも「その方がいい。風呂を沸かすから入ってゆっくりしな。」
風呂はうれしいけれど、なんとも妙な気分・・台風大丈夫かなぁ、明日は絶対晴れてよぉー!!ちなみに夕食は美味しかった。

 8月13日 3:30起床 慌てて窓を開けると、ヤッター!!星が出ている。ヘッドランプをつけて、4:05剣山荘を出る。いよいよ剣に登るんだ。しばらく登ると、一服剣で剣本峰とよく間違える前剣が見えた。5:30前剣に到着し、朝食を摂る。5:50再び出発。やせた岩屋根を歩き、6:26平蔵のコルを通過する。この辺りで、5〜6名のクライミングのパーティが追い越していった。そして、ついに来ましたカニのタテバイ!ちょっとしたロッククライミング〜
順番待ちの行列の中に先ほどのグループがいた。ここで話しているうちに福岡労山・ピナクル山の会のパーティと判り、初心者をやさしくリードしてもらえないかとお願いした。快く引き受けてくれ、全員がうきうきと心弾ませながら、いい顔で頂上に7:40到着することができた。バンザ〜イ!!文恵さんが持ってきたシャボン玉を交代で飛ばす。頂上では、注目の的。下界の阿万会長に一報を入れる。全員一言ずつ話す中、愛しいダーリンが恋しくなったのか、感動して夫人の知津子さんが思わず涙。
白山、白馬、遥か彼方に富士山まで見えるすばらしい景色でまだまだ頂上に居たいけれど、何しろ今日は、二日分の行程をこなさなければならない為、先を急ぐ。
下りは、うわさに聞くカニのヨコバイ。足場に足を降ろそうと思っても、足元が見えないため、空に浮かぶ様で気持ちが悪い。何人かが奇声を発する。もちろん西都弁で「こえ〜(コワイ)」「おぇ〜」「何処持つとやー」「どんげすっとやー(どうするのー)」(一応女性です)そんなこんなで全員無事ヨコバイを下りて、ほっと胸をなでおろした。一方通行が終わる所にある、平蔵のコル避難小屋跡のそれはそれは目も開けられない程臭いトイレで、誰とは言わぬが置き土産をして帰る者がいた。征服した満足感か下りの足取りは軽い。11:00剣山荘到着。荷物をまとめ11:40に出る。
 長い剣沢雪渓でアイゼンを付けてワイワイガヤガヤ、ワッハッハ。歩いているのは私達10名だけだ。貸切の雪渓は、気持ちが良かった。
 雪の上もそろそろ飽きが来た頃、真砂沢ロッジに14:20到着する。雪渓歩きで、暑さはさほど感じないが、冷たいスイカorかき氷orアイスが恋しくなる。気を取り直して、14:35仙人峠に向けて出発。左手に一度は行ってみたい八ツ峰、三ノ窓がかすかに見え、横目で見送った。
 しばらく歩くと、大きな×印が中央の岩に描いてあり、河原左岸を歩くべきところ右岸を歩いてしまった。何だかおかしい・・・対岸にいい道が見え、間違いに気づく。来た道を引き返し、ここで約1時間ロスタイムしてしまった。今日は、長い時間歩かなければならないのに悲しいことだ。戻ってみると、さっきの×印の少し左横に○印があった。見落としたのだ。巻き道を見つけ、ロスタイムを挽回すべくどんどん行くと、一瞬ドキッと足がすくんだ。道が、くの字に曲がって前方が見えない。下は、剣沢の水が勢いよく渦巻いてうねっている。「え〜、ここを行くのかーちょっとやばいなぁ〜落ちたら流されるううう〜いややなぁ・・・エイッ! 行くぞ!」岩に体をくっ付けるようにして、鎖を持ちながら岩の向こう側に手を回して足を伸ばす。足元を見ると、ウワ〜助かったぁー足場があった。さっきの恐怖感がなくなると、ここも楽しいところに早代わり。皆、無事にクリアする。 
 ようやく、近藤岩が見え16:00二股に着く。ここで剣沢と別れ、つり橋を渡るといよいよ最後の急登だ。仙人新道左に池の平に続く道、三ノ窓雪渓を見て右に道を取る。途中ヘリコプターが私達の上空を3回飛んだ。普通だったら手を振るところだが、心して誰も手を振ろうとしない。時間が時間だけに今手を振れば、救助を求めている様でし〜んと下を向いて歩いていた。二股から2時間、水場はなし。やっと稜線がみえた。うれしいと思ったのも束の間、1つめのピークに騙され(ピークは2つある)がっかりし、そのうえ早朝から歩き詰めで、疲労感もピークに達してきた。皆の顔が、段々険しくなってきた。「ブルーベリーでもあればいいのになあ」願いが通じたのか、木立の中に紫のブルーベリーの実があちこちになっている。我先にサルのごとく、その実を口に入れた。甘酸っぱい味に顔がほころび元気が出た。しばらくすると雨がパラパラとしてくるが、本降りにはならず、向こうの山頂に空から虹の架け橋が現れた。「きれい!!」その光景は、枯れた心にも潤いを与えた。
そして、やっと見えた、見えた。右対面谷の向こうに赤い屋根の仙人池ヒュッテが・・・「おーい、おーい」手を振って声をかける。「おーい、おーい」返事が返ってきた。全員の声が山中をこだまする。笑顔を取り戻したメンバーは、「もうすぐ着く、もうすぐだ。」と仙人池ヒュッテに向かった。峠を右に曲がると、長靴を履いた小屋の息子さんが迎えに来てくれ、メンバーの人数と無事を確認すると、先に小屋へ行って報告していた。
到着すると、小屋の人達と宿泊客数人が、入り口で並んで出迎えてくれた。小屋の母さんが「よかった、よかった、疲れただろ。お茶でも飲みなさい」と、熱いお茶を配ってくれた。この温かさは、体の隅々まで染み渡り、目頭までも熱くしてくれた。「早く風呂に入ってご飯を食べなさいね。」ここでも期待していなかった入浴をすることが出来た。食事中、言葉は少ないが小屋のおじさんが相手をしてくれる。実家に帰ったようなホッコリした気分が疲れた心身を癒した。この仙人池ヒュッテの人達の事は、きっと忘れられないだろう。ヒュッテ着19:00

 8月14日 4:30仙人池の水面に映る朝焼けの八ツ峰を見ようと思ったが、曇りで映っているのは麓だけ。これが見たかったのに・・・・・残念!!絶対にもう一度来ようと決心する。(ちなみに、小屋の営業は7月から9月末までである。)この仙人池、大きな八ツ峰を映していたから、写真ではとても大きな池に見えるのだが、実際はかわいらしい池だった。
朝食を済ませ、5:35仙人池ヒュッテを出る。この山行最後の日の今日は、仙人谷を歩く。所々すさまじい雪崩のつめ跡があり、大木がなぎ倒され、道は壊れている。仙人湯で石川県小松の労山の人達が、皆の目の前で露天風呂に入った。「男はいいねぇ。」羨ましさに横目で見ながら先に出発する。
仙人温泉から阿曽原へ。ここで「トロッコに乗る観光客が多いので最終にしか乗れないかもしれないよ」と知らされる。阿曽原を出たところで一輪のカタクリの花を見つける。今ごろ咲いているなんて・・・あまりの珍しさにシャッターを切った。
 峠を登り、ついに水平道になる。黒部ダムを作る為、当時の人達が岩を削って作った道だ。その人々の苦労を偲びながら、ひたすらトロッコ乗り場・欅平に向かう。下を流れる黒部本流との高度差は200m。途中の志合谷トンネルでは、ヘッドランプを付けてちょっとした探検気分で7分程歩いた。冷たい水が足元を流れ、まさに天然のクーラー。とても気持ちが良かった。残り少なくなった山での時間を楽しみながら、16:20欅平に到着する。
 着いたとたん、米田さんが、余りにも多い観光客を目にし、「ここに何があっと?こんげな山の中に大勢人がいて、何があっと?」と大きな声できょろきょろ目を丸くしている。『こんな山の中に大勢の人』とても印象的な言葉だった。
 欅平では、なんと2時間待ち。18:28やっとトロッコに乗る。トロッコ列車の前半の車両は普通の車両のため、乗り場に入ってきた列車に皆「え〜? トロッコじゃないのぉ?」しかし、私たちが乗る車両は、トロッコだった。全員拍手で大喜び。いつでも、童心に返る私達はパラパラ振り出す雨もへのかっぱ、いつものごとくはしゃいでしまった。
夕暮れの中に回りの山々はボーっと浮かび黒部川が流れている。水墨画のような光景に「まるで、中国の桂林のよう・・・」行った事もないのに、誰かがつぶやいていた。1時間20分の乗車後、ヤレヤレ19:50宇奈月温泉に到着する。
ささっとお風呂に入って、全員疲れた様子も見せずに宴会で盛り上がる。0時就寝。誰が寝言を言ったか、いびきをかいたかなんて誰も知らない。

 8月15日 今日はゆっくり、お土産を買った。10:45富山行きの列車に乗り、スーパー雷鳥26号に乗り換え12:05発大阪駅に向かう。15:36大阪駅到着。18:40大阪空港を発ち19:50宮崎に到着。夕食後、全員無事に解散する。
いつか皆でヒマラヤにも行こうね!!

【メンバーの一言】
中村 静枝(52歳)・・・・・・・・・・皆で剣に行こう!! 皆でトレーニングをした成果があった。すばらしいチームワークにカンパイ! 最高の天気にバンザイ!

羽田 サツ子(51歳)・・・・・・・・ヤッタア 剣頂上バンザイ 歩いた歩いた仙人ヒュッテ、欅平の遠かったこと。皆、頑張りました。好天に恵まれ、高山植物、雪渓、トロッコ列車、どれもこれもすばらしく最高!!しゃべった笑った十人一体となった五日間いつまでも心に残ります。ありがとう。

杉谷 絹代(51歳)・・・・・・・・・・やった!! 剣山頂に立った。 大阪に来て山登りも、まだまだ宮崎のようには行かれなく、トレーニング不足が心配でずいぶん迷いました。でも、このチャンスを逃せば・・・・・・と思い、あつかましく参加。山行中の三日間、天候にも恵まれ、カニのタテバイ、ヨコバイもどうにかクリアー。山頂に立った感動は、どう表現すればよいか(思わず主人にTEL) 前回の槍ヶ岳もすばらしかった。でも、剣はそれにもまして大々カンゲキ!!スケールの大きさにびっくり。あの仙人池ヒュッテまでの長い登り、欅平までの断崖絶壁の細い道、暗いトンネル、黒部の山の深さをひしひしと感じる。雪渓、お花畑、トロッコ列車、宇奈月温泉の夜、楽しいおしゃべり。この充実感は、宮崎の気心の知れた仲間なればこそ。今度宮崎を離れることになりましたが、二年後を楽しみに大阪で足腰鍛えたいと思います。      
中武 よし子(49歳)・・・・・・・・・・ヤッターヤッター、40代で剣に登れた。        

阿万 知津子(44歳)・・・・・・・・・・感激!!                          

米田 智恵子(37歳)・・・・・・・・・・雪に花畑。剣岳からの眺望にも恵まれ、120%満足。自分の写した写真を見てちょっとがっかり。もっと、腕を磨こう!!

実広 けい子(36歳)・・・・・・・・・・登山を始めて間もないのに、ずうずうしく付いて参りました。でも、ずうずうしく行ってよかったー!! 雄大な自然を全身で浴びるって、気分最高だぁー
 
倉永 君子(52歳)・・・・・・・・・・緊張の中にも楽しかった剣岳。仲間と一緒に登れて最高 ! 
 
青島 清子(50歳)・・・・・・・・・・初めての北アルプス山行 目の前に広がるすばらしい景色に感動!! 泣いて、笑って、滑って、転んで・・・仙人峠までの最後の登りは苦しかったけれど、仙人池ヒュッテの山小屋のご主人の暖かいおもてなしは、とってもうれしく忘れることが出来ません。
すばらしい心に残る思い出をありがとうございました。
                               
浜砂 文恵(50歳)・・・・・・・・・・シャボン玉とんだ〜♪ 剣でとんだ〜♪文恵もとんで〜壊れて消えた〜        

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