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投稿レポート

2005/04/17
西都山岳会「NAMAさん

このレポート・写真の著作権は、「NAMA」さんにあります。
無断で転写・転用をお断りします。

月度ミツバレポート

小積中央稜アベック登攀

宮崎県/大崩山

メンバー
NAMA・バイルしげ・妙ちゃん・KYさん・HIDEさん・KIさん・MKちゃん

 3月末に比叡南面を一緒に登ったとき、
「雪嶽山将軍峰に登る為に小積中央稜に登りたい」
と言ったら
「4月16・17日に行くよ」
とKYさんの快い返事が返ってきた。
 
 4月16日(土)晴れ 大崩山の麓にあって、小積の岩峰を一望できる美人の湯にゆったりと浸かり、ビ-ル中毒の妙ちゃんとコ−ラでのどを潤したら、16:30頃にKYさんたち一行がやって来た。
 そのまま、大崩山登山口を過ぎ、去年の台風で壊れた林道を、倒木や落石をどけながら少しでも上にたどり着こうと進んだ。そうしてどうにかいつものベ−スに使う広場までたどり着くことができた。
 この場所は、車などは何台か駐車でき、テントも数張りは張れるほどの広さがある。
今回は車2台、テント3張りだった。広場(林道)中央で、焚き火を囲んでの晩餐会は大いに盛り上がった。明日は4時起き、5時出発の為10時消灯となった。
 
【工藤新道】
 今回は、坊主尾根へと続いている林道を坊主尾根まで行き、そこから赤や白のテ−プを頼りに坊主谷へと下ってゆく。この道を仲間内では工藤新道と言っているみたいだ。坊主尾根に出会ったところから、赤・白のテ-プをたどりながら行くが、それはいきなり坊主谷に下るのではなく、すこし登り加減気味にトラバ−スして行くのが正しい。すると、昨年の台風で崩壊した白い岩で埋まっている坊主谷と出会う。そこを登り気味に横切って、小積の岩峰の基部を壁沿いに奥へとたどって行く。すると左奥へ右も左も切り立った崖に阻まれたルンゼが現れる。岩がごろごろした急なルンゼの奥が中央稜チムニ-の取り付きで、その手前の睡直の壁が中央稜ル-トの取り付きである。
 私の場合、いつもは、大崩山登山口からのぼり、小屋を経由し三里河原を渡渉して来るのだが、2時間強を要するのである。それが、この工藤新道では、1時間30分で着いた。5時過ぎにテン場を出発して、クライミングの取り付き場所に着いたのが6時30分だったのだ。30分も時間短縮になるとは、工藤新道に感心したのである。
 ただ、この道の場合気をつけなければならないのは、テン場が登山口付近で、そこから歩いたのではあまり意味がないということだ。

コ−スタイム ・



「中央稜ル−ト」と「蜘蛛の糸ル−ト」平行クライミング

 KYさん・KIさん・HIDEさんが、やたらと私に言う
「リングが古くて、切れているところはこれを使ったら良いよ」
と言って、細い紐で編んだボルトの芯にはめる細引きをくれた。
「ところどころに楕円形になったリングボルトがあるが、細引きで十分大丈夫ですよ?」。
きっと私に中央稜の人工壁を登らせたいんだな〜・・・。私のパーテイーが蜘蛛の糸ル-トを行くと時間がかかるからいやなんだな〜・・・。と感じた私は、先輩方の優しい配慮を甘んじて受けようと決心したのだった。中央稜のリングボルトの古さに負けて、ココのところ中央稜下部は蜘蛛の糸ル−トしか登っていない私は、さびて楕円形に伸びているリングボルトを恨めしく思いながら、登ることを決心したのである。30年ぶりと言って良いくらい登っていなかったのだ。
 中央稜ルート「NAMA・バイルしげ・妙ちゃん」、 蜘蛛の糸ルート「HIDEさん(FYK)・kyさん(FYK)・KIさん(佐賀RCC)・MKちゃん」というメンバー構成だ。
 おもむろに上を見上げ、古錆びたリングボルトの1本目にあぶみを掛け、半分人生をあきらめた覚悟であぶみに乗った。後は、リングが伸びていようが、ちぎれていようが、気にしないことにした。たま〜に出てくるハンガーボルトにホットしながらの登りであった・・・が、案ずるよりも何とかで、錆びていても、楕円形に伸びていても芯までは腐っていないのであろう、わりとしっかりしていて3ピッチ目になる頃にはリングが切れる心配をしなくなっていたようだ。
 ほぼ垂直に近い壁を、アブミの掛け替えをくりかえし登るのだが、雄大な景色を足下に見ながら、天と地の間を一歩一歩上がる、この瞬間の爽快さは、これを体験したものにしか分からないだろう。
 ただ、この人工クライミングが全く初めての妙ちゃんにはつらい試練であったろうと思う。1ピッチ目の彼女はなかなか上がってこない。私には一箇所で動かなくなってしまったような錯覚さえ感じさせた。時間が刻々と過ぎてゆく、それでも彼女は垂直の壁を一生懸命に上がろうとしている。垂直という壁に、へばりついてる恐怖感が、あぶみ上の彼女のバランスを不安定にし、身体を萎縮させる。だから、次のリングボルトに手が届かず上になかなか上がれない。そうとうな苦労を、強いられてるようだった。(そういうことを想定して、一週間前の4月9日(土)双石山の人工壁にアブミクライミングの練習に行き、そこで特訓を行った。)


 


 

 2ピッチ目になると、蜘蛛の糸ルートを登っているKIチームが見えてきた。50mくらいだろうか、右側を登っている彼らがすぐそこに感じられた。蜘蛛の糸ルートの3・4PをリードするHIDEさんが、すっごいところを登っている。KYさん・MKちゃん・KIさんも、それぞれにすっごいところに立っている。あちらからはこちらが、そう見えるらしい。しばらく写真の撮りあいこが始まった始末だ。そういう場所で声を掛け合いながらのクライミングは初めてであり、とっても楽しい体験であった。人口登攀の下手な妙ちゃんには、KIさんやKYさんから、ありがたき叱咤激励が大いに飛んでいた。ここまで全く登場しなかったバイルしげさんは、終始、妙ちゃんのサポートに徹していたのだった。3Pと少し(4ピッチ目)の下部登攀は、7時10分取り付き下部終了11時10分だった。

 

 
 

中央稜上部 

  
 蜘蛛の糸ルート(5ピッチ)と中央稜ルート(4ピッチ)の下部を時間的に比べると、常識的に考えて人工ルートの方が早い。人数も雲の糸チ−ムが4人で中央稜チ−ムが3人なので、我々の方が早くて当たり前なのだ。2ピッチ目頃はこちらが遅れ気味だったので焦り気味だったが、なんとか彼らより先に下部を終了できて安心した。
 昼食と休憩を済ませ、上部岸壁5ピッチ目のチムニーに取り付いたのは12時前だった。
いつもはリュックを荷揚げするのだが、リュックをからったまま取り付いた。中間部の狭くなっている所はリュックがきつくて苦労した。あとの二人分の荷物はテラスの下の所に引き上げた。
 6ピッチ目 スクイズチムニーはピンが何本も追加で打ってあるような気がした。そして、来る度に難易度が下がっているような気がするのは、私の思い過ごしだろうか。後続の二人もなんなくのクリアだった。7ピッチ目の風穴でザックを前に出してくぐり抜け、岩と岩の間の狭くなっている所を体を横にしてずって行くと8ピッチ目下の広場に着く。
 8ピッチ目、ここから上が私の好きな場所である。高度感はひじょうに増して、下部岸壁を真下に見下ろし、クラックやリスをル−トにたどり、上の窓から坊主尾根をのぞき、直下に大崩山の山小屋を見下ろしながらのトラバ−ス。ピリッと辛いが、快適な登攀を約束してくれる場所である。
  

 

 9ピッチ目は上の窓の少し下、凹角から始まるが、一箇所か二箇所はカムによりプロテクションをとったほうが良いだろう。そこをシュリンゲなり、アブミなり使うと楽にあがれる。後は上の窓の上をトラバ−スしてガリ−の中を直上すると10ピッチ目のビレ−ポイントだ。この頃になると、さすが石橋さん率いる鹿川庵軍団。9ピッチ目のビレ−ポイントで追いつかれてしまった。こうなると、また、楽しいにぎやかなクライミングとなるのは当然のことだった。
 10ピッチ目、右のほうにスト−ンと落ち込んだスラブを、右のほうに3mほど巻き、直上してひだり側のクラックを登る。ここはプロテクションに0.75番か1番のカムがあったほうが良いだろう。このピッチは15mほどできった方が最後の快適なのぼりのために良いだろう。11ピッチ目は坊主谷の方に切れ込んでいるが、簡単なフリクションクライムで終了点へとたどり着く。

  

 大崩山小積中央稜は昔から何度も登っているル−トだが、今回みたいに雲の糸ル−トと中央稜ル−トで仲間と声掛け合いながら、写真撮りあいながら登ったのは初めてのことだった。おかげさまでいい写真を撮ってもらえたし、楽しく登れた。また、大勢で一緒に登れたらいいなと思った。

 【報告・NAMA】 

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