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投稿レポート

2001/10/27
西都山岳会「NAMAさん

このレポート・写真の著作権は、「NAMA」さんにあります。
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10月度ミツバレポート/Vol.2

大崩山小積ダキ中央稜登攀

熟年クライマー小積ダキを攀じる

O林(62歳)・NAMA(52歳)・T中(50歳)・Y崎(女性50歳)

 石鎚山で高知の人たちと約束した、小積ダキ中央稜登攀のガイドの日がやって来た。
中央ベランダで1泊して、下部・上部をゆっくり登りたいとしていた計画だった。その中には71歳のK島氏が入っていた。その彼は、仕事の都合上どうしても参加できなくて、とても悔しがっていたそうだ。合わせて133歳クライマ‐コンビの中央稜登攀を、ギネスに載せようかなと悩むほど楽しみにしていたのに次回に持ち越しとなった。
天気予報では明日土曜日の降水確率は20%、日曜日は70%となっていた。「天気が悪いみたいなので登攀は上部だけにしましょうか?」と言うと「中央稜登攀は、下部からでないとダメだ!上まで行けなくても良いから」の岡林氏の一声に、大崩山登山口近くのテント場を5時出発と決まった。もちろん、天気の都合上2日間にわたるの〜んびり登攀を止めて、明日1日で登ってしまう事になったからだ。
(中央稜は、中央のブッシュ帯<中央ベランダ>によって上部と下部に分けられている。)
 酒の大好きな高知人もさすがに明日のことを考えてか、21時には床についた。


チムニー上部


チムニー

 10月27日
 午前4時15分に起こされた。簡単に朝食を済ませ、登山口を5時15分に出発した。山小屋の下をとおり、三里河原と湧塚コ−スへの分岐点を湧塚の方へ。渡渉点で薄明るくなりヘッドランプを消した。渡渉地点から湧塚への一般登山道をしばらく辿ると、湧塚への登りの案内板がある。そこを小積谷のほうに入ってゆく。もちろん踏み跡らしき道はない。よく見ると赤いテ‐プが道しるべとなり中央稜の取り付きへと案内してくれる。小積谷に入ったら北壁の基部近くまで沢をたどって行くと左側に大きな壁が出てくる。その壁のスソを左に辿ってゆくとルンゼに入る。そのルンゼの奥のほうにある長〜いチムニ−が取り付き地点だ。7時過ぎに着いたので約2時間の道のりだった。
 ゆっくりする時間も惜しんですぐに取り付く準備を始めた。O林氏とT中氏(合計114歳)が組む。T中氏はO林氏を師と仰ぐ今年の四月にクライミングを始めたばかりの新人だ。しかし、登山歴は長くガッツも十分で今日のためにみっちりと練習したそうだ。私と組むY崎(合計102歳)さんは藪漕ぎの名人でタフなところが持ち味、クライミング歴は浅いが今日のために人口登攀の練習に励んだそうだ。「このル−トはアブミクライミングは少ないよ」と言ったらチムニ‐を見上げながら不安そうに「私、登れるかしら」とY崎さん「彼女のパワ‐と根性なら大丈夫」とO林さん。
7時40分に取り付いた。
 (1P・X‐・35m)約20年ぶりの登攀となるこの下部ル−トは、記憶も薄れていて懐かしさだけがよみがえってくる。見上げるといかにも苦労しそうなチムニ‐だ。最初は狭く上部になるほど広くなっている。ザックを背負ったままでは、厳しいと思った。狭い最初の部分はホ‐ルドもしっかりしており、難なく最初のチョックスト‐ンにたどり着く。そこからはだんだんに広くなりバックアンド二‐でずり上がる。かなり体力を要する。チムニ‐最後の所にある木(人の足くらい)の下の広い部分は、右上の岩に狭い隙間がある。そこに小さいフレンズ(エイリアン)をかませて、A0で両足を両壁につっぱって登るか、アブミをかけて登る。その木の右上に平行ピンがある。そこから4個のリュックを滑車を使って上げた。
 (2P・V・25m)平行ピンの右を2mの岩角を上るとブッシュ帯になる。ブッシュ帯を10m上って、右に10mトラバ−スすると平行ピンがある。もう一つは、2段目のチムニ‐を10mほど這い上がってゆき、草つきを10mトラバ−スする。
{初登時のル−トはブッシュ帯をそのまま上まで行ったそうだ。右に取り付くル−トは<3P目〜6P目>、蜘蛛の糸ル−トだ。}


3Pビレー地点

 (3P・W・30m)平行ピンの3mくらい右のところにピンが有り、草つきの凹角状の所を直登する。ホ‐ルドもスタンスもすべて草か小さい木を頼らざるを得ないので、足は滑るし木は抜けるわで、なんともいやらしいピッチだった。そのピッチの終りは、左上のフェ‐スに向かう。二人がやっとのテラスに上がる前のホ‐ルドに使う岩(高さ80cm・幅30センチくらい)が5cmほどぐらつき真っ青になった。次の人がもし、全体重をかけたらその上に乗っている岩も一緒に落ちるかもしれない。Y崎さんがなかなか登ってこなかったのでかなり悪戦苦闘したみたいだ。それでも、表情には明るさがあった。
 (4P・A1・25m)傾斜80度ぐらいのフェ−スでアブミクライミングだ。ハンガ−ボルトの新しいのがすべて打ってあり安心してアブミに乗れる。ここらに来ると高度感もでてきて、小積谷の黄葉と湧塚の岩肌とのコントラストがすばらしい眺めとなる。終了点は、4人何とか立てそうなテラスだ。
「ここはO林さんの言うおいしい所じゃが、さき行かんや?」「良いんがヤ」「良いどこじゃね〜わ」と宮崎弁と高知弁の会話が弾む。
下湧塚から声をかけて声援してくれている人たちがいる。よく耳を済まして聞いてみると、仲間のマッキ‐、ヨシヨシ、ジッチャンと高知のS村さんのグル‐プだ。彼らは1泊2日のクライミング計画で中央ベランダまでの荷揚げ隊だった。前述のごとく中止になったので湧塚コ−スで黄葉ハイキングとしゃれ込んだのだろう。彼ら(女性が多いが彼女らより彼らの方が正しい)の声援はとても嬉しかった。


4Pの人工登攀・T中氏

 (5P・W+・A1・30m)左上にあるカンテ状の大岩の下を、右斜めにトラバ−ス気味に回り込みながらA0とアブミで登ると、かぶったブッシュの凹角になる。ピンの上に立って、ブッシュを握って一気に這い上がる。かぶっているので、ちょっとやばかった。終了点は大きなテラスだ。
 (6P・ブッシュ40m)3mのフェイスを一気に登ると中央ベランダのブッシュ帯だ。11時30分に中央ベランダ着となった。順子さんの奮闘により、思ったより早く着くことが出来た。12時までに中央ベランダに着いたら上部も登る約束だったので、昼食と少しの休養を取って12時20分登攀開始となった。
ここからは蜘蛛の糸ル−トから再び中央稜に戻ることになる。
 (7P・W・15m)上部もチムニ‐から始まるが、1Pのチムニ‐を皆体験しているからこのチムニ‐は難しくない。スクイズチムニ‐の基部でピッチをきる。
 (8P・X・20m)スクイズチムニ‐は傾斜がきつい。左足を割れ目に入れてずり上がってゆくが、下手をするとずり下がることもある。上部はかぶさった岩のあいだを這い上がってゆく、リュックがあるとなんともやりにくい。上部のかぶさったところで、Y崎さんが疲れて休憩した様は、セミになったように思えた。(決して、登れずにセミになったわけではない)


風穴をくぐるY崎さん


下の窓をくぐるO林氏

 (9P・V−・20m)このル−トで一番好きな所がこのピッチだ。何も難しくない草つきのル−トだが、天然の風穴をくぐらなければならいし、下の窓も通らなければならない。クライミングル−トでは、めったにお目にかかれない自然が造ったすばらしい場所だ。
 (10P・W+・40m)ここからは、小積谷・坊主谷を見下ろした高度感抜群のル−トだ。う〜ん、やっぱりクライミングのだいごみは秋だ。坊主谷・小積谷は黄色のやさしい葉が一面に広がり、坊主尾根・湧塚は黄葉と紅葉そして岩肌とのコントラストがすばらしい、秋真っ盛りである。岩はしっかりしているので、フリクションも利きレイバックの感触も気持ちよい。上の窓下の凹角でビレ‐となる。


上の窓から小積谷の紅葉を


上の窓上部トラバース

 (11P・W‐・A1・20m)凹角の中に1個所フレンズをかませて上がると上の窓にでる。ここに来ると必ず窓をくぐって坊主尾根の登山者に手を振る。今回も手を振った。登山者もビックリしたようだ。
上の窓の上をフリ‐で登ると右へトラバ−スだ。ハンガ‐ボルトがよく効いているので、快適なアブミトラバ−スとなる。凹角を直上しきったところでビレ‐となる。テラスではないので長い時間の確保は辛くなる。
 (12P・W・30m)フリクションで3mほど右へトラバ−スし(ここのところはランニングをとらない方がいい、上部でザイルの滑りが悪くなる)、直上すると細い凹角へと入る。ピンがないのでフレンズを利用するとよい。凹角の終りの左上にしっかりした岩のテラスがある。このままうえに登って登攀終了となってもよいが、ザイルのすべりも悪いのでここで一旦確保したほうがいいだろう。
 (13P・V・A0・20m)A0でピンを2本登ると、あとは簡単なフリクションクライムで登攀終了地点にたどり着く。
登攀終了15:00

 いろんな登り方をしなければ攻略できないこのル−トは、高知の3人には始めての体験だったらしい。いろんな登り方をすると体力もそれなりに消耗する。13P登攀時間約8時間のクライミングを終始笑顔でこなしてきた、大先輩のO林さん、クライミングを始めたばかりのT中さん、根性で私に着いてきたY崎さん皆さんのがんばりに敬意を払います。
(あとで見せてもらった、Y崎さんの足と腕は擦り傷と打撲でいっぱいだった。)

 登攀終了地点には、湧塚で手を振って声援してくれた仲間たちが待っていてくれた。これもすごく嬉しかったが、テント場に着いてからのご馳走接待には感激した。やっぱり、西都山岳会の女性達が一番だ。
 【報告・NAMA】 

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