水流渓人・投稿レポート「北岳バットレス/第4尾根主稜(V級)」投稿者:キーボウさん

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2005/11/16キーボウさん

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祖母山
コシカケ岩登攀記

 

【報 告 者】キーボウ
【日   時】2005年11月13日
【参 加 者】スガマッチ・キーボウ
        (加藤さん、Jimny一家の皆さん、遊也さん)

≪コースタイム≫     
九合目小屋(8:00)――取り付き点(8:40/9:00)===終了点(13:05/13:20)---九合目小屋(14:00/14:30)---北谷登山口(18:20)

 
 


アプローチ風景

 

 祖母山九合目小屋での懇親会明けの13日は晴天。雲海の向こうに久住連山、近くには大障子、前障子の岩峰群や傾山が見える。午後から天気は悪くなる予報なので早々に準備をする。小屋番さんの案内で水場付近から左の藪に入りウルシワ谷横の小尾根を下る。一応小さな目印の赤いテープはあるが、足元は刈り払われた笹のため歩きにくい、傾斜も急だ。一旦、ウルシワ谷に下りて、次は南側の小尾根を辿りウルシワ谷の支谷に降りて進むこと40分あまりでコシカケ岩の取り付き点に到着。ここで、登攀の準備をして、スガマッチ、キーボウペアで先行させてもらった。
 
 

 


1Pをリードする私

  
1ピッチ目(21m/IV+;キーボウリード)
 開拓以来ほとんど登られていないようでホールドは多いがしっかりしているかどうかあやしい。また、コケが生えていたり、小石が剥がれ落ちるなど不安定。一部濡れたところもあり、結構緊張させられる。途中のボルトや終了点はしっかりしている。ボルトの間隔はどちらかといえば近目。グレード通りの難易度に感じられた。このルートは、連続するピッチというわけではない。おのおの独立した6本の岩峰を登るものだ。1ピッチ目と2ピッチ目の間は岩場のバリエーションといった感じで、ロープを出した方がよさそうな部分もある。藪こぎもある。結構時間をかけて2ピッチ目の取り付き点を見つけることができた。
 
2ピッチ目(33m/V+;キーボウリード)(I峰)
 取り付き点は急な笹薮の中。セルフビレイは倒木で取る。1ピン目のボルトは見えているが岩の状態がもろそうで恐い。ここはスガマッチさんの番なのでスガマッチさんがリード。右手のブッシュでランニングを取り、1ピン目を取りに行こうとするがどうしても一歩が出ないようだ。ここで、リードを私と変わることとした。微妙なバランスで一本目にヌンチャクを掛けランニングを取ったが、ここでヌンチャク類の多くがスガマッチさんのところにあることに気づいた。1ピン目でセルフビレイを取り、ヌンチャクを引き上げ、気を取り直して継続する。次のピンも左へのトラバースで、ここもいやらしい。ようやくフェースに出て直上。もう少しで、終了点というところでロープが重くなって引けない。仕方ないので左側の立ち木でピッチを切る。後でスガマッチさんに聞いたところ途中でロープが溝に挟まっていたようだ。そのまま、スガマッチさんが5mくらい登り終了。
 


3Pをリードするスガマッチさん

 

3ピッチ目(30m/5.10a?;スガマッチリード)(II峰)
 ここは、核心部のクラックの処理が難しいとのこと。だがピンは近め。スガマッチさんは1ピン目を取って右側の掴みやすいホールドを手にしたところで岩が剥離。2mくらいのフォール。危ないところだった。気を取り直して慎重に直上。正面に顕著なクラックが見えている。でも、言われたほど難しくはない。すんなり越えて行った。

4ピッチ目(15m/IV;スガマッチリード)(III峰)
 このIII峰は一番小さなピークだ。簡単だけど岩が脆い。リードのスガマッチさんが岩をはがし、その岩がビレイしている僕のそばを通り過ぎていった。危ないところだった。頂上から寅ロープを使って降りる。

 


5Pをフォローするスガマッチさん

 

5ピッチ目(25m/5.10b?;キーボウリード)(IV峰)
 5ピッチ目は中心にチムニーを持った二つのピークからなる。チムニーの右がIV峰、左がV峰だろうか。ここも寅ロープ伝いに取り付き点に降りる。中央のチムニーも登れるとのことだが、正規ルートの右のフェースを登る。この岩場で一番グレードの高い5.10bだ。初めの出だしはちょっと悪いがまあそこそこ、そこから右へ右へと伝って、右端のカンテ状を登る。このあたりはホールドも多く快適。5.10bは無さそう。野岳でも5.10aくらいだろうか。5ピッチ目の終了点から懸垂下降で先ほどのチムニーを抜けたところへ降りる。ここから、固定ロープがあり、プルージックで登ると6ピッチ目の取り付き点。

 


5Pより6Pへは懸垂下降にて

 
6ピッチ目(20m/5.10a?;スガマッチリード)(V峰)
 直上から右にトラバースして終了点へ。このトラバースが「絶叫トラバース」とされているところ。だが、真直ぐ上に行けば登れそうなところをわざわざトラバースさせているように思える。プロテクションを取るためにはトラバースしかないが、微妙なスタンスを拾ってのトラバース。この高度でホールドを信用できないクライミングでは「絶叫」もありかも。いつ剥がれるかも知れないホールドはひょっとしてロシアンルーレット(?)ということで、全6ピッチを登り終え終了点で相棒のスガマッチさんとがっちり握手。北側の稜線上に九合目小屋も見えている。真直ぐ下にはウルシワ谷が白いスジとなって見えている。トモエム落としの岩壁も確認できる。その向こうに尾平のほしこがinnも見える。遠くには傾山の岩峰が屹立している。紅葉は尾平付近ではまだ残っているようだ。ここのロケーションは最高。九州でもこんな高度でのクライミングエリアは他には無いだろう。

 
 

 後続のJimnyさんたちはまだ2ピッチ目を登り終えたばかりのようだ。申し訳ないけど、お先に降りることにした。
 行動食を取り、靴を履き替え、稜線伝いに祖母の北側のピークに向かって登る。小屋よりも標高が高くなって来て右へトラバースして一般登山道に飛び出す。5分も下ると九合目小屋に到着。
 荷物をまとめて、スガマッチさんは尾平登山口、僕は北谷登山口へと分かれ下山した。
 今回は、なんとか天気ももち、なかなか充実した山行でした。初めて組むスガマッチさんとのロープは呼吸も合い良かったです。スガマッチさん、お疲れ様でした。
 

【投稿・キーボウさん】
ご寄稿いただきましたキーボウさんには深く感謝致します。水流渓人

 

スガマッチさんの記録→■クリック!

   

 

開拓者の加藤さんより、初登時のグレードからの変更が届きました。

●グレード大幅変更です
 今まで自分で感じたグレードをつけていましたが、どうやら甘いつけ方していたようです。

1ピッチ目…21m6本/IV+
 5ピン目までは三級とやさしいが後半核心。

 1ピッチ目と2ピッチ目の間リッジがあり岩景色がすばらしい。

2ピッチ目…33m9本/V-(T峰)
 2ピッチ目は前半トラバースと垂直カンテ登りあります。

3ピッチ目…30m10本/5.9(U峰)
 中間部の足ジャム、ハンドジャムでのクラック処理が核心。このルートのハイライト。

4ピッチ目…15m5本/IV(V峰)
 一番短くやさしい。

5ピッチ目…25m11本/5.9〜10a(W峰)
 前半薄かぶりの所が核心。後半快適フェースあんどカンテ登り。このピッチの横にはチムニールートあります。グレードはたぶんIVだと思います。なを右のフェース登る人は最初にかけたぬんちゃくは2ピン目かけたら外した方が流れがよくなります。
 このルートは浮き石も多いので落石には十分気をつけてください。

6ピッチ目…20m7本/5.8(X峰)
 前半はやさしい逆層登り。ただ脆いところがありますので石を落とさないよう十分気をつけてください。後半高度感たっぷりのトラバース。スタンスはしっかりしているので安心してトラバースできます。ここは2ピッチ目のより難しい。

 

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