そこは、すでに8号目。駐車場になった広場に、座り込んでラーメンを食べるところから「天包山」は始まった。雲行きを見ていると、いつでも降りそうで、傘を2本携えて歩き始めた。
「坊主岩」がすぐに見えてくる。西郷軍が政府軍に追われ、一戦を交えた地だそうだ。坊主岩に、その弾痕が残っている。坊主岩の隙間から、坊主岩に登って
みる。緩いスラブよろしく、簡単に登れた。視界は雲に遮られていたが、晴れていたら素晴らしい眺めが楽しめそうだ。直下のハウスがよく見えていた。坊主岩
を降りて、案内板を見ると、雨乞いに登る岩だと書いてあった・・・。傘を持ってきて良かった!
上の駐車場に抜ける。途中は自然林の中だが、やはり登山の面持ちには欠けている。横を電線と電柱が平行して抜け、途中で工事用の砂利道が横断する。山頂
に近づくにつれ、山頂に立つ鉄塔が数本見えてきた。だが、山頂だよな!家族登山を始めて、11回目に訪れた記憶を辿っていた。1997年11月30日の事
である。長男が4歳。登りで、汗が噴出し呼吸が乱れる私の横で、涼しい顔でひょいと歩く15歳の長男になっていた。かつて、家族で訪問したとき記念撮影を
した山頂の標識は、朽ちた棒になっていた。視界は増設された鉄塔にさえぎられていた。
「覚えてるか?」「ん・・・っ、写真で見て覚えちょる!」しばし、展望台で座るが何もする事も話すことも無い・・・。親父と息子ってそんなものかいな〜
と、少しさびしくなる。「おい!スキスキでチューってしてやろか!!」と問うてみた。ギョッとした息子は、苦笑いをしながら「気色悪ぃ〜!!!」と、しか
めっ面をしながらベンチから立ち上がった。「なんでか?お前をいつも抱っこして、チューってしちょったっちゃかい大丈夫やが!!!」と、再度お願いしてみ
たが、「お母さんとしちょきない!!」と、返事が返ってきた。
いつもボーッとしている息子に、登りには振り返りながらの地形確認も必要なんだと話した。地形図の話も、少し聞き耳を立てるようになった。卒業文集に
「山登り」を今後も続けたいと書いていたのを思い出しながら、私も体力を維持しておけば、今後の楽しみも増えるのかな?・・・と、少し期待をしている。階
段状の遊歩道は、標高差200mを一気に8合目駐車場に到着させてくれた。
あちこちと、林道をフラフラ運転しながら、タラの木を見つけては「タラの芽」を収穫・・・。坊主岩のお恵み?で、ザーザー降る雨になってしまったが、た
らふく収穫して「カリコボーズの湯」に直行した。途中の山肌には、雨に煙りながら満開の山桜があちこちに咲いていた。温泉に到着すると、大人400円・中
学生250円のボタンを押しながら、次回は2人の大人料金なんだな!と、思ってしまう。食堂に設置されたテレビで、WBCの2次ラウンド、対キューバ戦が
放映されていた。少ないお客さんが6人ほどテレビを囲み、8回裏・・・。5−0で勝利した日本を見届けて、男湯ののれんをくぐった。息子と二人貸切の露天
風呂からは、一ツ瀬川対岸の山桜が見えていた。ゆっくり浸かろうと構えていたが、「お父さん、先に体を洗ってくるわ!」と、湯船を出た息子の後を追い、洗
い場の隣に座るが、しばらくすると、「先に上がっちょくわ!」と脱衣場へ出て行った。体や髪を洗ってもらう為に、温泉では私の隣に立って待っていた長男
だったが、それもすでに10年前の出来事だったけなぁ〜。
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