七
熊山(ななくまやま)、やさしい野鳥の声が響き渡る、穏やかな山だった。ただ、この登山道は「塩の道」と呼ばれる、かつて物資を運んだ道と聞けば、当時の
厳しさを想像してしまう。また、西南の役で破れた西郷軍が、政府軍と一帯で激戦を交えた地と聞けば、印象も違う七熊山となる。
照葉樹林都市を唱える「綾町」の市街地から、綾南川沿いに走ると、「照葉大吊橋」の下をくぐり、小林市須木村へと抜ける。周囲の照葉樹を見渡しながらの
ドライブは、すこぶる気持ちがよい!時期的に、大好きな「山桜」が満開を迎えていて、深い緑の中にポコポコと咲く様は、とても癒してくれる薄ピンクであ
る。「綾南ダム」を過ぎ「湖畔荘」の看板が見えると、左の大規模林道(舗装2車線)へ左折する。展望のよい林道からは、ダム湖や、この日当初の計画だった
大森岳や、周囲の山々がよく見えている。七熊山からの北尾根と大規模林道が交差する辺りに、「七熊山登山口(塩の道)」の標識があった。
山頂までは、明瞭な目印と地形で50分で到着した。かつての物資を運んだ「塩の道」は、当時に思いを馳せるのに十分な形をしていた。薩摩街道ほどの堀下
がりではないが、運搬による侵食を見て取れた。なだらかに高度をあげるのは、登山としては楽ではあるが、米俵を積んだ馬が通行するにはどうだったのだろう
か・・・。
山頂で一息入れると、歩き足りないので「三ツ石山」を目指してつながる尾根を辿る。七熊山山頂から少し三ツ石山方面へ下ると、右から登山道が合流してい
た。地図にないが、どうもそれが主の登山道になっているらしき事が後から調べて判った。しばらく目印も明瞭だったが、一向宗のかくれ念仏の場所「坊屋敷
跡」までだった。そこからは、藪とかつての塩の道跡を探しながらのワクワクする行程である。高度の見誤りもあり、三ツ石山山頂は、今後の宿題となったが、
実に素晴らしい自然林を歩ける。尾根に立つモミやツガやヒメシャラの大木がいい!今回は、七熊山から80分の探検?での引き返しとなったが、戻りは登りに
もかかわらず30分である。後から林道から見たら、あと少しの所まで来ていた。
落葉の山も明るくて好きだが、常緑の照葉樹の森は、なんとも九州らしい気がする。楽しめる山は、近くにたくさんあるが、楽しもうとする気持ちがなければつまらない・・・。帰りに綾の温泉に浸かりながら、子供達の下校時間に合わせて綾を後にした。
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