ゴールとなる『大浪池登山口』に車を駐車し、積んで来た自転車で『新湯温泉』へと下る。身支度を整え、新湯林道をテコテコ夫婦で歩く(まぁ、夫婦で来たんだから当然だな!)。私は2度目だから、そうワクワクは無いが、ずっとため息ばかりついているママが隣にいる。ここのところ、岩登りの誘いにはまったく応じてくれないが、ここ数日の夏日が、なんとか「沢歩き」に応じてくれた。
30分程で、霧島川に架かる橋にたどり着く。取水口になっている所から川に入る。以前、相当な冷たさを記憶しているが、今日はあまり冷たく感じない。最
初の小滝へは泳いで滝左に取り付いた。ママがあまりに接近して付いて来るので、返って登りにくく「ちょっと待て!」と先に登ってママを待つが、すでにお助
けロープモードで上を見上げている。恐い恐いと言っていたもの、尾鈴よりは恐くない!と言い始める。・・・少し慣れてきたのだろう。
すぐに出くわす「両滝」を眺め、左を巻く。一旦、尾根に出てすぐ沢に下りる。沢に下りたトタン、「あれっ!」とママが叫ぶ。見ると、手にウェーディング
シューズのフエルト底を握っていた。ママのモンベルの沢靴の底が見事に、しかもきれいに剥がれた。チビナイフと細引きで、応急にワラジ状にフエルトを作
り、履かせる。恐る恐ると遡行を続けるが、問題なく付いて来ている。適度に現れる小滝や、ナメ滝や、斜滝も、その靴で楽しめた。
少し歩くと、ママを待つ・・・。そんな登りは前回より倍の時間を要した。フエルト剥がれのアクシデントも伴い、また、恐々の歩きだから仕方ないが、時間
のかかる歩きは、家族で山歩きを始めた頃を思い出した。自分の体力が無い事に合わせ、子供達の一番遅い歩きに合わせる。それは、辛抱強く待つ事を私に教え
てくれた。それだけに、皆で到達した山頂は感動的だった。子供達も、そう感じたかは判らないが、家族を近くに感じ、何かを成し得る事を、強く体で感じた。
ほのぼのとする沢登りを楽しめたのは、私が一度来た事があり、ルートもペース配分も、そして下山も把握できるからだが、ゆとりがあると安全性が向上する。
ゆとりある、楽しめる山行も大切だと感じた。その為に、やはり、経験と技術の向上は大切であり、自己能力の範囲を意識し制限できる意思も大切だと思った。
そう・・・、何も無かったように、子供達を学校に迎えに行き、自宅へと戻った。「沢登り、どんげやった?」と、長男が聞いた。
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