取り付きに立つと、「今日は、3スラかぁ〜。3Pと4Pをやり過ごせばいいかぁ〜。」などど呑気に登り始めた。といってもなんだが、1Pからフォローで
ある。1〜4スラは同じ取り付きで、左に1スラ、まっすぐ2スラ、右に4スラとなっている。2.5スラと3スラは、2スラと同様に直上すると、ブッシュ交
じりを登り、3スラの核心となる3Pを目指す。
3P、ルート核心の6+級。少ないホールドを拾い、直上する。ホールド・スタンスが消えた辺りから、左に体勢を移しながら、カチホールドを微妙なバラン
スで両手で取り、足ブラ加減に左足をズリ上げて外形したスタンスに立つと核心は終わる・・・はずだったが、染み出しで、その上のコーナーが実にイヤラシク
なっていた。
4P、リングポルトがRCCボルトに打ち替えられていた。安心して掴める・・・でなく、登れる!難なくリードして行った小松の親分に続く私は、やっぱり
A0だが、謙虚に「上がってなんぼの商売だ!チョンボやりやり虫ぃ〜!」なんて唱えながら呑気なもんである。
5P、ワンポイントのハング越えだ!と、落石を目の当たりにするまで気が抜けていた。少しの力で、抜け落ち落下していった50cm四方の岩が、私が数分
前までビレーしていた位置に砕け落ちていく様は、何か走馬灯のようにアリアリと見えた。完全に、精神に麻酔でも注射されたかのごとく、無意識なのに体が完
全にこわばっていた。登り上がる事など、大したことない!そう判っていて体の動きがチグハグなのだから、情けなかった。
6P、リードさせてもらう。無心・・・とは、そういうことなのだろうか。空っぽの頭で、ロープ一杯伸ばして松ノ木へ。
7P、簡単に終了点だが、満足感というより、頭が空っぽで爽快!って感じだった。稜線を歩き、下降路への分岐で昼飯を食べた。「登った?」「自分の足
で?」そんな単純な確認作業を頭の中で行っている自分が居た。とりあえず、今、自分が直面しているのは下山することだと言い聞かせていた。千畳敷に立ち、
いつもの穏やかな気分に戻っていた。また、じっくり岩と話をしよう!その時は、出来る限り丁寧に登ってやろう!と、再確認をしていた。
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