「どのルートにしますか?」などと決まらずにいた。本当は、鉾岳スラブのササユリを見ながらのクライミングを考えていたが、遠く福岡から合流していただ
けるKYさんとのクライミングが断然優先である。「ひょつとしたら遅れるかも・・・。」と仰られていたKYさんが1時間以上も前に到着され、近い私達がノ
コノコ後から到着である。
なんて言おうか・・・?などと、向かう車中で川キョンと話していたが、居眠りしながら喋る川キョンとは話が合致する事はなく、支度しながらKYさんに
「3スラ辺りに・・・。」との意見に反対する言葉は持ち合わせていなかった。3スラの黒光りスラブまでは、1・2スラと同じピッチを登る。3スラ突入とな
り6級のリードは、私にはかなり自信の無い事・・・、とっとと最初ぐらいは・・・と私がリードで取り付き50mロープをのばして、立木で確保し、フォロー
するKYさんと川キョンは、そのまま今度はリードしながらブッシュ混じりの中に消えていった。追いつくと、3スラの黒光りスラブが正面に見えてきた。
テンション低い腰抜け気味の私と川キョン・・・、KYさんにリードをお願いするが「あんたら登るまで、私は待つ!」と仰られ、先輩の川キョンが取り付い
た。的確なKYさんの指示と、素直な川キョンの登りは、とうとうその核心ルートを成功させた。しかも完全にフリーで・・・。そして、続く6級ピッチも川
キョン先輩はリードを成功させた。フォローする私は、いつものチョンボを下からKYさんに注意されながら、いつも以上の体力を消耗して登った。登りなが
ら、リードは無理だろな!と、思うばかりである。
3スラの3ピッチ目は、ちょっとした小ハングが出てくる。川キョン先輩に促されて、しぶしぶ私がリードで取り付いたが、ハング上のピンにクリップしたあ
と、その上のホールドをとろうとすると、下のアンダーホールドを持つ手が外れそうで、どうしても有効な乗り越し体勢を作れず、こっそりピンにかけたヌン
チャクを掴んだら、下からすかさず「左手!」と声が飛んできた。・・・が、その手は離れる事無く、私は罪悪感にかられながら登り上がってしまった!!
まぁ、実力だろう・・・!と、納得していたが、あくまでも純粋に岩に挑戦される間もなく60歳のKYさんに叱咤激励されると、本当に情けない気がしてなら
ない。
得る物の多い1日だったことは言うまでもない。技術?それ以上に、高い精神を見せられ、足元にも及ばない貫禄を感じさせていただいた。
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