銀鏡地区に入ると、他より時間が緩く流れている気がした。人家の間をすり抜けるように車を走らせると、ほどなくで人家は途切れる。河の口地区からは直
進で南郷村だが、左・・・上揚林道へ進路をとる。年度末の公共工事だろうか・・・災害復旧の工事を地元の聞き慣れた建設業者の現場がいくつかある。次の台
風で、また崩壊しそうな気もするが、こうやって走れる事は有り難いと思わねばなるまい・・・。
時計の高度計と地形図を確認しながら荒れた林道を走る。正面に樋口山が見え始める頃、大きく谷を渡る所を2度ほど過ぎたあたりが登山口・・・・と見当を
つけてみる。自信がなかったのでしばらく走ると、「通行止め」の標識と建設現場となった。少し戻り、林道脇の赤テープ付近をうろついてみると「宮崎県の
山」の記述どおりの登山口だと確認できた。顕著な登山口標識がないのもなんだか嬉しい気がする。米良の山特有の急な登りを想像しながら、身支度を整えた。
作業道を100m、谷を越えた辺りから目印が尾根へ導いている。掘削のもろい斜面を注意しながら杉林へと入っていく。しこたまキツイ傾斜の登りに耐える
と、一気に汗が噴出してきた。休憩を小刻みに取りながら、稜線へたどり着くまで90分を要した。前日の雨で、踏みしめる落ち葉の下の土がフニャフニャして
踏ん張りが効かず、余計に急登斜面を辛くしていた。
稜線は別世界である。自然林がふんだんに気持ちを満たしてくれる。暑いぐらいの春の日差しに、シャツ1枚で充分である。力強いブナの原生林は、この山の
自然の濃さを象徴している。椎葉村側は九州大学の演習林で、手付かずの豊富な森林である。冬枯れの稜線からは、左に西都市の山々が折り重なるように見えて
いる。雪降山・烏帽子岳・オサレ山・地蔵岳・天包山・国見山・・・・・。右に市房山〜二ツ石の圧倒的な山塊。振り返れば自然そのままの三方岳方面である。
少しアップダウンをすると、いよいよ山頂までの急登、しかも高度差230mの一気登りを向かえる。しばし、息を整えて取り付いたが、長男・次男には遥かに
置いて行かれてしまった。マイペースのスローなママにもついて行けず、一人バテた情けない親父である。
山頂で景色を楽しみ、市房山を見ながらの昼食。心地良い風についつい居眠りをしたくなってしまった。ただ、稜線から後半の尾根は、暗くなると少し判りに
くくなりそうだったのであわてて下山を開始する。湿った土が足を滑りやすくしているので慎重に下る。ゆっくりだが、ペース良く下れた。最後、林道へ降り立
つ所は掘削でボロホロの急斜面になっていた。目印を外れて降りやすそうな所を探してみたが、かえって進退極まりリュックのロープを使っての脱出劇となる。
全員、楽しむように落着いた行動で、一層思い出深い「樋口山」となった。
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