岩登りは、続けている間は「慣れ?」「経験?」・・・なんだか判らない物が、ある程度の怖さを克服し、行きたい気持を上昇させる。今回は、3ヶ月ものブ
ランクが生じていた。諸事情や、家族との時間を優先したい気持もあったからだ。9月になれば・・・、と仲間ともスケジュール調整を図っていた。第1・2週
は、天候不良で中止。第3週は、相棒の仕事都合・・・の状態。3週目の事は、早くから判っていたので、熊本のじんさんと、ご近所のゆきさんをお誘いしてい
た。
本当は、1・2週めで岩の感覚を取り戻し・・・。などと首尾よく行くストーリーを描いていたものの、今日がその日になるなど思ってもいなかった。初めて
比叡の岩を登るゆきさんを、何事も無く稜線へ導かなくてはならなかった。そう思うだけで、緊張が高まるが、それも自己の意識を上げる練習と思い当日を迎え
た。
たぶん、初めてのゆきさんは相当な不安を抱いていたと思う。その気持を少しでも落着かせるには、私の確実なリードとより落着いた行動、そして大切な緊張
感の持続をする必要がある。ロープを張るたびに、フォローする2人の緊張感のある小気味良い応答が帰ってきた。何事も無く、当然の様に終了点へ導いた私
は、少し緊張の糸が緩みかけそうになった。心配しはじめるとキリが無い危険が、岩登りには含まれていた。その危険から、少し開放されたからであろ
う・・・。登攀終了の握手を控え、もう一度気を引き締めなおし、下降路までの稜線を歩いた。
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