二人とも初めてのルートなので、ルート取り付き位置が判らず、資料片手にT峰の南面の基部をうろうろ、がやがやと・・・、で「そこ」に取り付いた。本人達は「奧の細道」だと思いながら登っていたのだが、書かれている資料とは全く違う厳しさだった。
「浪漫への避行」ルート
1P・・・Y級/20b 2P・・・Y-級/20b 3P・・・W+級/40b 4P・・・X級/45b
なのだが、今回のピッチ詳細はこうだった。
1P・・(Y級20b+Y−級20b)
リングボルトが直上しているスラブに取り付く。下から見上げた感じでは「ホールドあるかなぁ・・。」「逆層やなぁ・・・。」「しばらく誰も登ってない
なぁ・・。」で、Y級だが小松の親分ならなんとか大丈夫だろうなぁ・・。しかし、最初のピンまでの3bまでもなかなかすんなりとは行かない。次のピンまで
も、すごくバランスが微妙だ。一度、左のフレークに逃げ、第1関節ほどのスタンスでレストする。フレークにフレンズで支点を足す。そこからが大変だった。
薄い爪しかかからないホールド、しかも5箇所剥離した。ホールドがそれなら、スタンスもそれだ。「あっ、平行ピンがあるわぁ・・・。」と小松の親分が叫ん
だ。「まだ、ロープ20bしか出てないよ・・・。もう少し上と違うかなぁ・・・。」二人とも奧の細道ルートのつもりだ。そこまで、核心の連続・・・という
より、核心の継続なか?そして、そこから上がもっと大変だった。小松の親分は3度クライムダウンし、5分以上のレストをとる。初めて見る行動だ。小さいハ
ング下のボルトまで、どうしても届かないらしい。スカイフックを剥がれそうな薄いホールドにかけ、ずり上がってピンを掴んだ。後続の私は、ここはどうして
も決まらないホールドに、スカイフックを出すバランスも保てず、そのまま剥がれそうになり、トップロープを信じてスメアで立ち込みヌンチャクを掴んだ。
ノーテンとは言え、リードでは決して出来ない行動である。そこから小さいハング上左にある、大きな外形したポケットをとる。泥と落ち葉が詰まって滑る。ス
タンスが決まると核心は終わった。あまりにも緊張の連続と恐怖感に、私は少し吐き気がした。「スラブの怖さを思い知らされたナァ・・・。」「こんな核心の
続くルートは、初めてやわぁ・・・。」と、小松の親分が隣で言っている。そこをリードしたのも凄いと思った。風が秋になっているのを感じる。
2P・・・
少し、草付きを上がり、フォローの私も上がり、立木からスラブへ取り付くことにした。見上げればでかい岩が被さるように立ちはだかっていた。「行くや?」
と、小松の親分に気を使って貰うが、「どうぞ。」と譲る。「本当にルートかなぁ・・。」と言いつつ、直上するとかぶり岩の基部にボルトがある。直登でトラ
イしてみるが、そんな傾斜ではない。右に微妙なバランスで回り込むと少しで立木を迎える。ここまで来ると傾斜も緩くなり、そのまま私が登る。
3P・・・のはず。だが、少し登ると森になり岩場が消えた。左右見渡すとスラブが見えたので、少し左にきたかな?と、左のスラブへ向かう。こんな森をロープをのばして歩くのは、実に情けない。見上げれば、稜線も近づいているのが確認できた。
資料に「スラブは次第に傾斜が緩くなり両側のブッシュがせまって、細くなっている。」などと書いてあったのだから、この辺りで間違いに気付くべきだが、まったくノー天気な二人である。
なぜか4P・・・森からスラブを登ると、下降路になっている稜線に到達した。実に気持ちのいい簡単なクライミングで締めくくる。
自宅で、気づいて「浪漫への避行」ルート登攀のレポートとなった訳だっ(^_^ゞ
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