水流渓人のページ「登山日記」No.132
   
2003/5/28
矢筈岳 666m
〜帰路、日向市・美々津の権現崎ボルダーへ〜
  


比叡山のT峰より「矢筈岳」2002年6月撮影

 

 
 比叡T峰のクライミングにやってきた。3日前からの降雨で、南面スラブのほとんどから水が浸みだしている。今回は、相当な降水量だったので、それもそうだ・・・と見上げながら納得する。しかし、雨の降っていた前日、県内のほとんどが雨マークなのに、日之影のポイント予報を見ると午前中に「晴れマーク」である。信じがたいが、それだけを信じ川キョン・小松の親分と私は、のこのこやってきたのである。しばし、信じがたいがここだけ青空が覗き、べったり濡れたスラブを見上げていた。乾きの早いと言われている「1スラ」でさえ、取り付けないほどであるから、比叡を知っている人なら、だいたいこんな日にやってくる方がおかしいのかも知れない。
 折角だから・・・とのことで、3人とも登っていない「矢筈岳」に登ってみようと言うことになった。矢筈岳は、比叡山と綱の瀬川を挟んで、対岸の大岩峰の山である。以前は、比叡と同じぐらい岩登りが盛んで、人工ルートもあるそうであるが、最近に登られている話はあまり聞かない。林道が延び、矢筈岳登山口から30分程度で山頂と聞いている。とりあえず・・・などと言いつつ、3人は「ひょっとしたら、その間に乾いて登れるかも?」との下心見え見えでもある。
 矢筈岳側の林道から見た比叡山は圧巻だ。T峰は、ニードルも1つの塊の尖った岩峰に見え、なんと車道は岩肌の真ん中当たりを貫かれている。綱の瀬川から一気にせり上がる様は、素晴らしいの一言に尽きる。中でもU峰は、圧倒的な岩肌を見せていた。つくづく登れないのを恨めしく思い、身支度を整えて矢筈の山頂を目指した。
 しばらくなだらかな尾根を歩くと、一旦下降して岩場を一気に登り上がる。所々にロープが設置され、湿った登山道は嫌らしいことこの上ない。矢筈の山頂に立つと「あれっ?」と思った。比叡の全容が見えないのである。つまり、手前にもう一つピークが立ちふさがり、いつも比叡側から眺めている岩峰は、そのピークであるのだ。じゃ・・・私達の登っている所は?となるのだが、帰宅後地図確認してみると間違いなく私達の立ったのが666bの矢筈岳山頂であった。そして、もう一つのピークも間違いなく表示されていた。 
 おかしいなと思い、いろいろなガイド本を読んでみると「東峰」「西峰」の表示がある。ピークが西峰で、目の前に立ちふさがったのが東峰だとしたら納得は出来る。しかし、私は歩いていたときに「五栄岳?」「五栄山?」の分岐標識が少し気になった。もし、五栄岳だとしたら、よくガイド本に書かれている「比叡の千畳敷からは、圧倒的な矢筈岳の雄姿が・・・・」の説明が間違っていることになるではないか・・・・。
 矢筈の山頂で、海から押し寄せて来る雲を眺めながら、時折覗く青空に期待をしていた。三六〇度の展望を楽しみながら、「もう一度、比叡の登山口までいってみようか?」などと話し合っていた3人の頭の上に、ポツリポツリと雨粒が叩きはじめる。「下山!」と叫んで、滑りながら一気に下る。【-。-】

 もう誰も「比叡」と言う言葉はなく、丹助岳キャンプ場経由で国道218号線に出る。こんにゃく村付近から左方に見える比叡T峰を羨ましげに眺めながら「今日は、ドライブやな!」と、小松の親分の声が車内に響く。こう言うときは、誰かのせいにすると少しは報われる気がしたので、本日の原因はすべて川キョンということで丸く納めるべく、ボコボコにしようと思ったが、彼でなく彼女は私の師匠なのでそうも出来ないのだ。( ;^^)へ..

 比叡山への入口「槙峰」から延岡市内を通り、日向市にいる頃青空が広がった。しかも、日射しは夏・・・、「??(^_-)」と見渡すと尾鈴方面と延岡方面は雲に包まれている。日向市だけが大快晴・・・。ならば「岩登り+ビールではないか!」少ない脳味噌で、パプロフの犬の様に酒屋に直行である。小松の親分の案内で、知り合いの日向在住のクライマーの整備した「権現崎ボルダー」へ向かう。
 初めて来たが、「神武天皇お舟出の地」「海軍発祥の地」美々津の「権現崎」は、太平洋を見ながら波音を聞きながらで・・・異空間である。潮の匂いをかぎながら、波の打ち寄せる岩場に出ると、「はい!ここから離陸(取り付き)して、トラバースで行きます!」と小松の親分はもうクライミングシューズに履き替えて軽々登り始めた。下が砂地で、少しトラバースすると海・・・落ちても大丈夫だ!なんて思い、取り付くが離陸出来ない。最初のヒールフックが決まらないのだ。3度目でなんとか離陸成功で、何とも不安定なスタンスからトラバースしないといけない。微妙にどの岩も右に傾き、傾斜が90度を超してくる。「あぁ〜、もうダメ。」と波の引いた砂地に着地。あわてて濡れないように走る。師匠「川キョン」は、離陸出来ずに苦笑いである。下から安易にトラバースし、かぶり岩を抜け、ゴロタ石の小さい入り江に着く。まさに、両サイドを岩に挟まれた至福の空間となった。6割程度がハング状・・・\(◎o◎)/!
とりあえず、青空と岩に乾杯である(^_-)---☆。自由に取り付ける空間には、10b程度のコースもとれる。おかしな話しだがトップロープで練習は、初めての体験となる。岩登りをはじめて、私のトップロープは、いつでもゲレンデでのセカンドの状態しか経験がない。登る人の下にビレーヤーがいるのは初めての状況である。ビールを飲みながら、昼食をとり3人には満面の笑みが戻る。
 3人組、フリールートなのに下で確保が変な感じに思えてならず・・・。結局登り上がったテラスからの確保の方が勝手が良く、ザイルも岩に擦れなくて良かった。私自身、テンションをかけられたことが無く、この日初めてビレー中のテンションを経験した。主に、少ないホールドでのクライムダウンは、リード登攀時の練習になると思った。フリークライミング・ボルダリングは、核心の練習にいい良く言われているが、着地の出来る所で出来ることがあの比叡のゲレンデで通用するか?と言えば疑問も残る。しかし、何度もパンプし力のない指で登る事も経験で良いと思ったし、マルチルートでパンプする登りは絶対禁物と背筋が冷たくなったのも事実である。そう言う意味では、スラブを離れ、ボルダーのみ、フリーのみに姿勢を変えてしまったベテランも多いと聞いた。じゃ私は・・・は、言えば力量の範囲内で・・・、より安全に・・・、少しは冒険もして・・・ぐらいのものかな〜(^^ )〜・・・と、逃げ腰論でしかまとめることが出来ない。
 すぐ近くの灯台が建つ、釣りの一級ポイント「七ツバエ」の島を目の前にして、比叡には無かった疲労感を感じ帰り支度をした。

 
参加者 ぱぱ まま 長女 次女 長男 次男 ゲスト
出欠           西都山岳会
年齢 44           小松の親分
山数合計 180           川キョン
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