1スラスーパーの呪縛から抜けれない自分がいる。去年のフォールは、まったくの不注意で、ミスコースどころか先行者の後をたどればフォールは免れていた
はずだ。第2コブ岩横のスーパールートの核心部を眺めながら、何度も考察を重ねる自分がいた。怖がっている証拠である。しかし、コマツの親分にトップロー
プを張ってもらい、セカンドで登る状況なので、今回大したフォールにはならない。分かってはいるのだが、岩登りを始めて、今日で10回目である。トップの
怖さとセカンドの気楽さの大きな違いを改めて意識している。でも、今年はここをリードしたい。その気持ちで「上がります。」と声を上げた。
取り付く前に、ラインをイメージする。以前は最初のピンが来る前に、行く方向をイメージしていながらフェースを右に出た。なぜ出たのか判らない。戻れな
くなってフォールした。そのイメージが強く、本来の核心部の手前で頭が一杯だ。右斜めに走るクラックぞいに、体は右のフェースへ出しながら登るとまったく
問題なく小テラスへたどれた。このラインの為に半年以上も頭にこびりついていたのか?と思った。しかし、核心部はこれから始まる逆層気味の傾斜のきつい
フェースである。
小テラスから直登するのが一番難しいらしいが、当然チムニーの裏から伸び上がった上のガバに右手をかけてずり上がる。逆層のフェースへ出る。1スラでピ
ン間隔の短さが難易度を示している。ホールドもアンダーに浅い所や、クラックも第一関節まで取れない。やはり怖がっているのだろう・・・、スタンスを確認
するとき起伏が見えていない。体が岩に張り付いている証拠である。意地でもテンションは嫌であった。今回テンションすると、リードの日が遠のく気がした。
3人登攀の中間になったので、トップからのロープをヌンチャクから外し、下からのロープをクリップするのが辛い。しこたま踏ん張り、手がパンプ寸前になっ
た。その時、1週間前の人工壁のボルダーの事が頭をよぎる。気を落ち着けて、両手を少し休めて振った。再度、小さいホールドに爪を立てせり上がり、左足が
上のスタンスに乗ったとき核心が終わった。リードでの課題は多い登りではあったが、なにかさわやかな風を感じた。
判ったのは、落ち着くこと、よく見ること、粘ること、そして、練習することである。
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