何処か登ろう!と、前夜話していたがなかなか決まらず、ママに決めてくれ!と「九州百名山」のガイド本を手渡す。「可愛嶽は?」と言われ、「そうしよう
か!」と口で答えつつも、「双石山か高千穂峰だなぁ・・!」と気持ちはそっちである。
翌朝、体調不良で長女が中学校を休んだ。小学校の子供達3人を連れ、母の命日の墓参りに、登校前に家を出た。墓参りを済ませ、学校裏門でおろすと、私の
気持ちはズンと重たいまま、ママのいう「可愛嶽」方面へと車を走らせた。「変更しようか?」「止めようか?」と聞きたいほど気持ちは重かったが、助手席で
眠り込んでいるので、そのまま登山口まで来てしまった。
ここまで来ると、「西郷軍」やら「西南の役」やら、歴史ムードたっぷりで気分は盛り上がってきた。登山口となる西郷資料館の駐車場に到着すると、掃除さ
れていた係りの方に駐車許可をもらい、支度する。正面に、可愛嶽の千丈覗の岩壁と烏帽子岳が見えている。なんだか、かなり長いアプローチに思う。登山靴の
紐を締めながら、左腕の時計を見ると高度計が10b程度しか示していない。標高差700b近くを登るのか!と、気乗りしないまま歩き始めた。
南尾根を登りに使う、杉林の整備された道を徐々に登っていく。ユックリとしたペースで、ザレの頭にたどり着くと、千丈覗かぶさってきた。所々にぶら下が
る「西郷軍敗走路」の札に、逃避行の足跡を感じる。水のみ場へ到着すると、登山道は右のロープ場へ巻くように登り上がる。ザレの平を過ぎると、稜線が近い
のを感じた。
可愛嶽と烏帽子岳の分岐から、左方に進む。石積みのある前屋敷から程なくで視界の広がる稜線へ出た。稜線には、巨石信仰跡の「立石(メンヒル)」「支石
墓(ドルメン)」「環状列石(サークルストーン)」が見られる。百間ダキからは、延岡の町の中を流れる北川・祝子川・五ヶ瀬川が流れ、日向灘に注いでい
る。振り返り、ママに「良いところに来たね!来て良かったわ!」と、言った。
山頂からの展望は、桑原山・木山内岳・大崩山・鬼の目山、比叡山・行縢山が近くに見える。去年登攀した、大崩山の小積ダキもはっきりと見えている。誰も
いない山頂で、夫婦で昼食・・・・、カップラーメンでも文句があるはずがない。始終、景色にため息をもらしていた。風もなく、温かい日差しを浴びて眠く
なってしまった。
帰路は、分岐を烏帽子岳から北尾根を選んだ。ながらかに高度を下げながら、烏帽子岳の山頂?展望所に到着した。ここからの眺めも素晴らしい。北川の蛇行
がいい具合に広がっている。川遊びなら「北川」が大好きで、毎年来ているが、こんな角度からの北川も実にいい!夏に、テントを担ぎ上げ、夜は夜景を楽しみ
ながらビールを飲み、朝には日向灘からの日の出を眺めてみたいと思った。杉林を通り抜けると、林道工事の発破の音がひときわ大きく聞こえ出す。建設重機の
作業音が響き、林道に飛び出した。気を取り直して、再び登山道をジリジリ下り、「俵野天満宮」へ到着した。手前で右折だったようだが、天満宮の参道階段を
下り、線路をまたいで資料館にたどり着く。
子供達に、電話を掛けるママは、母親の声になっている。彼女のヘルニアも、ゆるやかに痛みが遠のき始めているようだ。今年は、もっと二人での山数も稼いでみたいと思っている。
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