水流渓人「hot-news」

2009年8月26日 「新百姓山/桧山」

山に吹く風は、もう秋の風で、じっとしているとスゥーッと引く汗を感じた。

 

 「命を輝かせて・・・」という言葉が気になっている。それに、ここ1週間頭の中をグルグル駆け回っている曲がある。「カモメぇ〜が翔んだぁ〜♪カモメぇ〜が翔んだぁ〜♪あ・な・た・は、一人で、生きられるのねぇ〜♪」という渡辺真知子の曲だ。ふと、気がつくと、どういうときに「命が輝いている!」と感じられるのだろうか?・・・と、考えている。そして、その時「カモメ」が頭の中を翔ぶ。
 「命」が「輝く」のを感じられるのは、自分が重い病気にかかったり、余命の限界を知った時なのだろうか?テレビなどで、癌と戦いながらも、自分の夢を追い続ける人・・・、そんな時、命が輝いて見える。いや、そういう時に使う言葉なんだろうか?悲しいかな、私は、登山やクライミングでは、輝いた命を感じてはいない。最近の自分は、実に「充実感」と「達成感」に渇いている。視野が外に向いてなく、内に向いているのだろうか?「命・・・輝く・・・。」状況は、本当は実感できる人は少ないのでは?
 
 「行きたい!」と思った場所でもないが、ニューピークだし、一日を自然に触れずに、また翌日から仕事環境になるのもどうか?と思っているうちに、火曜日の8時を過ぎてしまった。帰宅して、ビールの栓を抜いてから、ようやく「山を歩こう!」と思えた。まぁいい!カモメが頭の中をグルグル翔びまわったまま、山に来た。

 

  

昇る朝日で、輝く海・・・日向市付近 登山口となる「杉ヶ越トンネル」
   
 
登り始めてすぐにある「杉ヶ越大明神」
登山道は神社右の尾根に伸びる。
しばらく歩くと、展望が開ける。
 
 

ブナの巨木・・・。木の根に腰を下ろし、触れると穏やかな気持ちになっていく。
もっと、もっと時間を過ごしたい空間だった。
当初は、「新百姓山〜夏木山」往復などと考えてもいたが、
夏木山まで必死に歩かなくてもいいかぁ〜!勝手なお気楽モードへ・・・突入。
思い返せば、この時「カモメが翔んだぁ〜♪」は、聞こえてはいなかった。
 
「感謝して生きよう!」と、ご多分にも漏れない思考を無理に感じようとしてるのか?
これくらいでいい!と、感謝の気持ちを持とうとするのは、
「欲が無い」みたいな、「謙虚」みたいな感じもするが、
すでに、夏木山まで歩くという目標は消失し、「納得」と「満足」の域に到達しようとしている。
良い悪いは別として、「感謝の気持ち」は「諦める態度」の近い所にありゃせんか?
計画的には逃げてしまったが、この「ブナの巨木」とは、嬉しい出会いでもある。
何か、スゥ〜ッとするものを貰った気がした。

 
 

自然林の森は明るい。冷たいヒメシャラの樹皮に触れる・・・、吹く風も秋の涼しい風だ!

 
 

新百姓山/1272.5m

桧山/1297m

 
 

桧山からは、木山内岳・夏木山・五葉岳・大崩山・鹿納山がグルリ見渡せる

 
 

英国館 (国の有形登録文化財) 
見立鉱山を経営した神戸生まれのハンス・ハンター(範多範三郎)が、
英国人技師達の憩いの場として建てたといわれる「倶楽部(クラブ)」
 
   

 私の中の何かに変化が起きている。医者の友人に聞くと、「メジャー」の問題ではないか?と言う。常に高みを望み努力と経験を積んで来た僕達が、50歳を迎えた。そろそろ自分のメジャーを下げるべきだと言う。しかし、一段ずつ登って来た階段は、一段登れば、そこは階段でなくフラットなフロアーになり、常に階段の一段目を登るしかない状況を続けていた。友は、基本を忘れない為に、判りきった事を時々やってみるのだと言う。今となっては当たり前のように簡単に出来る事も、かつては苦労と努力の賜物だったはず。基本を忘れない!と言うより、私には「基本を努力して発見する!!」時期にさしかかっている気がする。決して高い位置に来ているのでは無いが、ちょっとした事に喜べる自分で無いと、感動や充実感に乏しい人になってしまう気がしている。
 山は優しかった。自然林の中を吹き渡る風は、汗を乾かしてくれた。ヒメシャラの林は、心の中に穏やかな風を起こしてくれた。凛として稜線に立つブナの巨木は、暖かくその懐に私を包み込んでくれた。登り下りを繰り返す登山道は、「焦るな焦るな!登ったら下る。下ってもいつかは登る。いつだってお前の立ち位置に変わりは無いんだよ!」そう教えていた。

 
 

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