水流渓人「hot-news」

2008年10月29日 水曜登攀隊+2「阿蘇/鷲ヶ峰・北稜」熊本県

どう説明したらいいのか?
去年の「
根子岳縦走」で、見えてきた「鷲ヶ峰」なんだろうか?
誰に説明する必要もないんだろうが、山を歩き、岩を登り、自然に足が向いた「鷲ヶ峰」のはずだ!

    

 「鷲ヶ峰!」の資料を、小松の親分に渡したのは、10月の初めだった。たくさんの情報や噂や、簡単に集められるのはネットのおかげだが、情報の選択は、あくまでも自己の責任である。主観もあれば、間違いもある。こうして書いている自分自身のレポートも、正確でもなく、まさに「感想文」なんだろうなぁ〜!劇的な紀行文でもなんでもないが、この「鷲ヶ峰」を通して、往年の九州岳人の手記を拝読するとき、血の騒ぎを感じるのはどうしてだろう・・・。
 私は、西都山岳会に所属している。この日の4人(水曜なんじゃこら隊)も、その会の会員同士である。山の師であるnamaさんが率いる会だから・・・の一念が、在籍理由の全てである。しかし、彼が目標にする九州の岳人であり、その岩の開拓に今もなお情熱を注ぐ現役のクライマーが、「三澤澄夫」氏である。どっふりと、その周辺にのめり込んだnama師匠は、自己の山登り(岩登り)に、更なる現役性を強く求め始めた。会長を降りると宣言し、私がその席に就く事になった。しかし、それはあくまでも、席を暖めるだけの代役に過ぎないと理解している。
 三澤澄夫さんの著書「たかが岩登り されど岩登り」の一節に、
『熊本の山と言えば阿蘇である。なかで登山の対象は、高岳と根子岳があるが、とくに高岳の鷲ヶ峰周辺は、戦前に五高(現熊本大学)山岳部によって開拓された岩登りのゲレンデとして有名である。』
と、ある。そう記されているのがきっかけで、私は「鷲ヶ峰」を目指した!という理由で充分である。比叡や鉾、宮崎の岩場にその人あり!の三澤さんが、登山の対象を『高岳と根子岳』とした、その思いを感じてみたいからである。少し感じてみたいからである。その三澤さんの山登り(岩登り)との出会いが、私の生まれた昭和34年でもあることに、時の流れを感じてもみたいからである。

 
  

天狗の舞台から、しげしげと眺めることが出来るのは、今、そこを辿ってきたから・・・。

  
  

朝の高岳は、山頂部に雲を覆っていた。

 
 

 根子岳を運動靴で登った。そして、今日も運動靴で行く!ただ、この運動靴はただものではない!最近、クライミングのアプローチや下山には、この手の靴が主流となっている。すぐれものの、この手の「アプローチシューズ」は、クライミングシューズと同様のソールが貼られている。かつての登山スタイルに思いを馳せての登山なら、亜麻仁油を染込ませた麻縄に、革製ビブラム底の登山靴が良いのかも知れないが、それは確実に私を敗退に導くことだろう・・・ネッ。(^=^; 

   
仙酔峡駐車場を出発する。 正面に鷲ヶ峰を見て、仙酔尾根と分かれる。
 
  
おっと、砂防堰堤工事の現場を横切る そして、赤ガレ谷に入る。
  
  

35分で、レリーフのある関門に到着!

関門から見上げる世界は、すでに異空間である。

 

関門を過ぎ、ガリー2へ入る。いよいよ厳しさ?緊張が増す。

 
 

 天狗台を見上げると、眩しさを増す青空が広がってきた。

 
  

第一キレットを目指す。非常に脆い・・・(@_@;)

かつて「一の窓」と称された『第一キレット』

 
 

鷲ヶ峰の手前に立つジャンダルム(護衛兵)にて

ジャンダルムを越える。後方に中岳ロープウェー駅

 
 

 狂い咲きのミヤマキリシマが数株が、ワイワイうるさい「水曜なんじゃこら隊」を見送ってくれた。仙酔尾根から分かれて赤ガレ谷を目指す。立ち被るブッシュの中の顕著な踏み跡をたどり、少しで工事現場に出くわす。現場の方に、順路を支持され、再度立ち被るブッシュに突入すると、また少しで谷に出る。汗ばむ頃、あっけなく関門に到着した。しかし、そこから見上げる景色は一変し、緊張が増して来た。少し休憩を取り、体が冷えない内にガリー2を目指した。
 ガリー2の登りは、とにかく脆い岩をこっそり抑える登りである。最初の古いハーケンを見つけた所でロープを出すが、気休めみたいな感じである。じんさん、川キョンはプルージックで登って貰い、私が最期に第一キレットに立った。途中、古いスリングやハーケンが数本確認できた。
 とにかくガレガレ・ザレザレのジャンダルムは、ロープ操作だけで落石を誘発させる感じだ!左巻きに上がると、さらに左にトラバースしながらジャンダルムの中間を、今度は右巻きに上がり安定した広場に出る。正面に、「赤壁」そして「北稜」が、鷲ヶ峰ピークに向かって聳えていた。いよいよ登攀だ!(^-^;)

  
  

聳える鷲ヶ峰は、下部「赤壁」そして、「北稜」の壁がそそり立っていた。

 
軽く「赤壁」を運動靴でフリーで越える!小松の親分 しかも、完璧直上・・・後続は難しい羽目に(--;)
 
   

北稜の取り付きとなる平行ピンから、赤壁終了位置を見下ろす。奥は「虎ヶ峰」。
  
 
北稜1Pをリードする小松の親分。 核心部となる2P。
  
1Pをフォローするじんさん。 2P終了点で、川キョンをビレーするじんさん。
  
 

フォローしてくる川キョン。脆い溶岩岩場の登攀は、花崗岩の数倍の神経を要した・・・( ̄○ ̄;)! 

 
 
3Pを登りあがる!爽快である。 ようやく、笑顔が出る。
 

簡単な4Pを通過すると、ブッシュを少しで「鷲ヶ峰」山頂に飛び出す!

 
 

 あれこれ、言うより思うより行ってみるに限る。季節や気候などの状況・・・、メンバーにより違う印象になることは良く判っている。いままで培った技術を組み合わせる事・・・、当たり前のように確実に素早くこなしていく事が大切である。じんさんは、たくさんの反省をしていた。めずらしく川キョンが、北稜2Pで凹角を登り過ぎてしまい泣きが入った。でも、それを補い補われ、チームとしてミスを無くしていく事が出来たと感じている。

 
 

鷲ヶ峰ピークで、しばし行動食を取りながら、先のナイフリッジを眺める。
先行する北尾根を上がって行った大分パーティが通過している。

根子岳がくっきりと見えていた。

 
  
25mの懸垂下降地点。 ナイフリッジの通過が始まる。
 
 
懸垂下降後は、ロープをつながずナイフリッジを通過する。
時間ロスを防ぐ為だが、そうできる技量はあるからだ!ヽ(^。^)丿
恐さより、登りとなるしんどさが優先し、ヒィヒィハァハァと登っていく水流ちゃんなんだ)^o^(
 
 
悪場の通過完了\(^O^)/ 天狗台にて!水曜なんじゃこら隊
 
 

登攀を終了し、高岳を目指し歩く。達成感一杯の頃である。

 
 

天狗台からは、通過してきたルートが一望出来た!

 
 
 高岳山頂 そして、中岳へ
 
 

中岳を過ぎ、展望所手前。右下は噴煙を上げている火口。

 
 
 約束どおり・・・750円で 下山はロープウェーさヽ(^0^)
 
 

 「何が見えたか?」・・・脆い岩壁と、どうしてそこを登ろうとした?という疑問である。しかし、その疑問は、鷲ヶ峰ピークで思いついたのもつかの間、天狗台では、その達成感に何もかも忘れていた。そして、ロープウェーに乗った頃には、私は一端の「九州岳人」みたいな感覚に浸っていた。2日後、その鷲ヶ峰登攀の報告をnamaさんにるすまでは・・・。40年以上も山岳を見てきた人からの鷲ヶ峰は、違う。そして、夜、机に座り、また三澤さんの著書「たかが岩登り されど岩登り」を読み返していた。その私が「九州の岳人達が登った山」を語るには軽薄すぎると感じた。私には背景が無い。私は何か大きく間違った感覚で、山を登り、岩を登っているのではなかろうか?と・・・。そして、それを感じ忘れない為にも、私が「聖域」なんじゃないかな?と感じる鷲ヶ峰を、時折訪問しようと思った。
 正直、達成感より、ホッとした感覚で下山した。皆で、温泉へ向かい、隣接の店で夕食を食べた。本当に、たくさんの恵みを受けた一日だった気がする。「それでいいんだよな!」そう自問し、「それでいいんだよ!」そう自答しながら眠りに付いた。

 
  

 ロープウェーから鷲ヶ峰・高岳・仙酔尾根の全景が見えていた。

     

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