水流渓人「hot-news」

2008年9月24日 「埋もれ木ルート/比叡1峰」宮崎県

  

久しぶりの比叡に、私はただただ「登れるだろうか?」と思った。

 
  

 2月、【第3スラブルート】を登った。小松の親分は、水曜日が仕事になり都合が合わなくなっていた。何度が合った都合も、雨で流れたりしていた。春、水曜登攀隊は活動を休止した。それなりに夏の計画を思い描きながら・・・・・夏、沢に興じ、私は膝を痛めた。なんだろう・・・投げやりになっていた夏、毎晩酔っては気分を紛らす日々・・・。そのままクライミングは、止めてもいいと思う日もあった。『私は、何を構え、何に怯え、何から逃げているのだろう?』そう思ったりした。
 外れかけた日々は、1ヶ月で登山の体型でも体力でもなくなった。ぐったりと仕事の日々に、『9月は、10・17・24日が休みなんでヨロシク!』と、元気な小松の親分の声が聞けた。待ちに待った!とばかりに、比叡に向かった10日、1ピッチを登って雨になった。後はダラダラと麓屋でビールモード。17日は台風の影響で中止。そして、小松の親分は知り合いの元気印「かせ君」と共に待ち合い場所に来た!じんさんも、勢い良く熊本から比叡入りした。私の膝や足首や体力は最低だが、やる気を起してくれたのは他ならぬ「仲間」である。また、しばらく夢が抱けると思った。

  
   
意気揚々と、取り付きに向かう! 取り付きまで2分!
 
  

写真は、去年のものだが、ルートはたぶんこんな感じだと・・・いい加減だが思っている。

 
 

第4スラブルートの1P

 
強靭(じん)さん!実に上手くなった。 13?クライマーのかせ君は、楽々ニコニコ!
  
 

 足がガタつき、肩で息をしながら、スタンスやホールドを見分ける能力も低下していることが良く判った。でも、こうして仲間達と登っていることが、なんだか嬉しくなってきた。「まぁ、上まで抜ければいいか!」と、10ピッチの登攀を楽しむことにした。
 
 こんなところに書くことでもないのだが、私が小学5年生の頃、父母が「キャンプに行こうか?」と準備を始めた事がある。暗くなり到着したのは、『えびの高原キャンプ場」だった。真っ暗なキャンプ場で、ローソクの明かりで貸テントの前で食事を作った。私が寝た後、父母は近くの露天風呂に行ったらしく、戻ってきたとき私は目が覚めた。「タオルを忘れてね!お父さんのパンツで二人とも体を洗ったっちゃが・・・!」と、大笑いしたのを覚えている。本当に少ない家族3人の思い出の一コマである。でも、その思い出を私はいつも思い出している。家族キャンプは、これがただ一度だが、思い出すたびにその暖かさに包まれる。
 なんでだろう・・・、今の賑やかな家族の中で、言い知れぬ淋しさを感じるときがある。一人っ子の私は、中学から家を出て暮らした。高校も大学も社会人になっても、家族3人で暮らせなかった。そして、一緒に暮らせないまま、私が24歳の時、親父は51歳で生涯を閉じた。一緒に暮らしていた時も、両親は夜も仕事をしていた。私は4歳頃から1人で寝て、朝起きても寝ている両親を起さず、私は近くの母の実家で朝食を食べて幼稚園・学校へ行った。親戚の中で、実に肩身が狭かったが、食べていく術だけを身にまとい、要領よく過ごす事を覚えなくては仕方なかった。残り物を食べ、意見を周囲に合わせて自分を殺すのだ。落ちそうな涙も、ここでは落とすわけには行かなかった。泣けば、反論すれば、そこにいる事は出来なくなる。唾を吐かれた事は何度でもある。他人の前で、「嘘つきだ!泥棒だ!」と言われたこともある。自分より年下のいとこ達が、明らかに上の身分で、それをわきまえなくてはならなかった。それでも、私には大好きな両親がいるという事で我慢できたのだと思う!我慢しきれなく、親戚に反論した日、私は地面に押さえつけられ、熱くなったフライパンの油を上からかけられそうになった!「やるなら、やってみろ!」と、大声を張り上げたのが、小学5年。両親がキャンプに連れて行ってくれた歳だ。私は、両親の子供に生まれた事に誇りを持っている。二人とも死んでいない今、私は、賑やかな家族の中で、ふと感じる淋しさはひょっとしたら亡き両親の愛情ほ思い出す時かもしれない。幸せな今だからこそ・・・。

 

4スラの3ピッチ目、当然6+級をリードする小松の親分。お助けアブミをせっとしてくれている。

 
 
ちょんぼ技術を、かせ君が激写!(かせ君提供) でも、ご利用しなくては登れない!(かせ君提供)

 ここを、じんさんは、フリーで粘りに粘った!強くなっている気持ちは、すでに私を追い越していた。多分、次回はフリーで抜けれると思った!たいしたものだ!気持ちが前に行っていない、最初から諦め登攀の私は、恥かしくなってしまった。いや、やる気を起させてもらった!という感謝の気持ちが強い。

  
 

嬉しそうなかせ君・・・。私も不安定な位置から1枚!

 
 

当然フリーで軽く登ってくるかせ君。汗だくの私達と違い、汗もにじんでいない!スゲエ〜。

 
  
埋もれ木ルートの1P。楽しい。 2P目、ここも見た目より簡単。
  
  

 その2P目をフォローする私。スタンスを見失い、蝉になりかけたが、フリーで抜けれた!(かせ君提供)

今回は、私の写真もたくさんある!!(じんさん提供)

7−級の核心をリードする小松の親分・・・分解写真だ(じんさん提供)

 
 
7−級の核心部をフォローするじんさん。 かせ君のピースクライミング?ナンノコッチャ
 
 

お決まりの登攀終了記念写真!

 
 

 やっぱ、来て良かった!気持ちを盛り上げてくれたのは、やはり仲間達である。たくさんの我慢や、たくさんの苦痛や、たくさんある有耶無耶ではなく。自分の中に、自分で作り上げるのが『気持ち』ってもんだよな!楽しいと思える。有難いと思える。今いる自分の中の自分が、そう思った瞬間・・・岩の感触が「いいなぁ〜!」と思えた。

 
  

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