思い出を語るわけではないのだが、熊本のじんさんとの出会いは２００１年９月になる。ネットという手段や、他県という距離感や、付き合いの長さとかいうものが信頼関係になるのか？つきあいの尺度になるのか？判らないが、人は何十年も付き合っても平行線である事が珍しくない様に、少しの時間でも意気投合することも珍しくない。
　あちこちの山もさることながら、子供を交えての平尾台も思い出深い。お互い夫婦同士で行った大崩山も面白い感じだった。そして、未熟な私が岩登りを教えたのもどうしてなんだろう・・・。雛祭りクライミングなんてのもあったよな！最近、私の休みや勝手な都合で、突然お誘いして申し訳なく思っているのは本当です(-_^;ごめんなさいm(_ _)m・・・いつも謙虚な水流ちゃんです(^_^ゞ

　大して喋らなくて、取り付きに来た。準備して、「じゃ、行きます！」「はいっ！」・・・そのくらい話しただろうか？後は、「ビレイ解除！」「登って来い！」ぐらい話した様な気がする。これだけ話さない山登りもあるものだ・・・と、内心はクライミングの事をそう思っている。だから、自分と問答しているのだろうか？意識していたのは、そう・・・！強く意識していたのは、私が落ちてはならぬ！という事だけだ。相手に不安を与えてしまうようじゃ誘った事すら申し訳ない・・・。ましてや、このルートをオールリードする事自体、私にとって初めての事なのである。
　じんさんは、「登らせてもらって申し訳ない！」と言う。そうだろうか？岩登りをする者、「リードさせてもらって有難い！」と思うのではなかろうか？ビレーヤーとしてのじんさんを見る限り、たぶん十分では無い事は判っている。私が落ちてどうだろうか？も安心しているわけではない。でも私が育てているようで、私が育てられているのは間違いない。集中して本番で覚えればいい！と思っている。私もそうしてきたんだし・・・。
　中央バンドの核心だけ怖がったが、後は楽々登ってきた。私は・・・というと、恐怖心が先に立ちビビリながらリードしたと思う。さぁ、後は大滝左ルートの直上２Ｐのみである。２Ｐのみなんだが、それがこの核心となっている。

　実にデリケートなスラブ登りが始まった。何度か登っているが、いつもどう登ったのか覚えていない。登りはじめて、完全にビビリ上がっている自分がいた。何度も「落ちるかも知れない！」と、頭をよぎった。そして、落ちる事無く登った。フォローするじんさんは、何度かテンションがかかったが、表情は明るかった。大したものだと思った。終了点で、「全部リードしたのは初めてやっつよね！」という私に、「え」に「゛」のついた「え゛〜！！」と言った。それでも私に着いて来るのだから、「申し訳ない」のである。

　坊主岩の基部を抜け、懸垂下降も難なく完了した。ギアを片付けながら、私は食料を口にした。フィックスをたどり、取り付き位置に戻った。今日登ったスラブを見ながら、感想を聞いてみた。
「ん〜、まだ実感がないなぁ〜。もう１本登ってもいいかなぁ〜！」
と言った。それは、私には強気な言葉には聞こえなかった。いつもながら、不思議なコメントをする人物でもあるが、きっと時間が経つにつれ、じわぁ〜っとしてくるんだろうなぁ・・・と思った。私が初めてここを登り、感じた感情と同じ様なら・・・。でも、私は初めて大長征ルートに連れて来てもらった後、実力を過信して１スラスーパーで痛い目に会っている。たぶん、連れて行ってもらうと、案外楽に登れるルートなんだろうと思う。
（これは余談だが、数日後、じんさんはちゃんと自分を見極めたメールを私に送ってきた。私よりは、しっかり足が地に付いた人のようだ！(^_^ゞ。）
　人の事を語る前に、岩登りの事を語れっ！てか・・・。いやぁ〜、じんさんというのは、特筆すべき事の豊富な魅力的な人なのですよ！d(-_^)good!!

 5:30自宅----７:15槇峰バス停----7:50登山口----8:05歩き始め----8:40スラブ基部・スタート地点----10:50美しいトラバース・バンド終了点----11:30大滝左ルートスタート----12:10終了点----12:25ラッペルポイント----ギア収納・休憩----13:00下山開始----13:20スラブ基部・休憩----14:06下山----日之影温泉----帰路----16:30帰宅