水流渓人「hot-news」

2005年11月20日 「親子4人の3KNスラブルート/比叡山」宮崎県

 

親子4人のチームワークで稜線を捉えた・・・。
メンバー  L水流パパ+高1長女+中2次女+小6長男
  

 私の日曜日休みは、年に6日程度ある。いつもは水曜日なので、家族で山に行けるチャンスは、祝日かその年6回程度の日曜日である。一応、正月・GW・盆は、連休もあるのだが「絶対に山!」でなくても、キャンプでも貧乏旅行でもいいと思っている。
 この日、ママはPTA関係の講演会出席。小4次男は、地区児童館主催の1泊キャンプに参加。また、数日前まで、高1長女は最近行っていない部活がこの日はある!といい、次女は友達と遊ぶから〜!といい、長男と私と何かしようかなぁ・・・って日曜になりそうだった。天気予報も「曇りのち雨」。
 それがそれが、前々日辺りから長女も次女も予定が無くなって来た。「よしよし!」と思っていたが、まさかこの4人で岩登り・・・というのも無理の領域にありそうで、どこか軽くハイキングかなぁ〜!と思っていたが、天気は「曇りのち晴れ」に予報が変わり、なんだが会話の成り行きからして「岩登り」という事になってきた。添えておかなければならないのは、子供たちがどうしても行きたい!という行為ではないということ・・・。

     
自宅を出た頃曇っていた空も、比叡で青空に変わっていた。
  

んっ!比叡の1峰南面スラブが見えた!
  

 「家族全員で・・・」という行為や状況自体、私が勝手に押し付けている事なのかもしれない。家族という単位を形成して以降・・・皆でキャンプをしたり山を歩いたりしてきた。今年の夏は、とうとう「家族全員での沢登り」を実行に移した。滝の登攀もスムーズに行った。長い行程を、子供たちは本当によく頑張った。
 私は、岩登りを始めた4年前から、比叡の「第一スラブルート」を家族で登れたらなぁ〜!と、漠然と目標めいたものを抱くようになった。たくさんのリスクは判っている。そうしなければならない理由はどこにもない。だが、気持のどこかに勝手な・・・ワガママな・・・「欲?」「夢?」がある。
 
 なんとなく、今回は長女+次女+長男のモチベーションが上がっていた。不安や怖さを口にする子はいない。かといって、登りたい!という態度もないのだが(^o^;)。
 高1の長女は2005年4月29日(高1の時)に、中2の次女は2004年4月6日(小6の時)に、小6の長男は2004年11月3日(小5の時)に、それぞれ「TAカンテルート」を登り、岩登りという行為を経験はしている。私が心配していたのは、誰かがもし・・・という事になれば、助けを呼ばない限りどうしようも無い状況が出てくる・・・と言う事だった。でも、おとな同士であれ、2人で登っていたら何もできない事は同じことであるのだが・・・。
 朝を向かえ、私は「長女のビレイで大丈夫なのだ!」「3人を引っ張り上げるロープワークにも問題はない。」「子供たちは問題なく登れる。」「私は当然の様にリードする。」という強い気持と、いままでの経験を強く意識した。

  
 
  
さぁ・・・入山。 ここの急登は、一気に汗が出る(-o-;)
     

 なんだ、なんだ・・・比叡にたくさんの人がいるぞ・・・!と思ったが、今日は日曜日だった。えっちらおっちら準備をする。呑気な子供たちは、まずオニギリをかじり始めた。それぞれのハーネスを私がつける。カラビナとスリングをハーネスにつける。リュックの荷物を、一つずつ確認しながらそれぞれに渡す。全責任は私にある。すべてに神経を集中させ、そして下山するまで維持することは、最低限、私の役目である。

  
  
取り付きでロープを解く・・・ 高1長女、マニキュアを塗っていた。
     

 朝、子供たちを起こした時、長女は、最近はまっているコスメいじりに深夜まで興じていたらしく、手足の爪にヘンテコな色のマニキュアを塗ったまま起きてきた。『こいつ何やってんだ!』と、 怒鳴ろうとしてその言葉を飲み込み・・・「よし!マニュキア塗ったまま岩に行っていいぞぉ〜!!」と、おだてるように言ってしまった。別によぉーく考えて、岩登りにマニキュアが邪魔になるわけでもないし、理由は明白!・・・・「おい!そのマニュキア落としなさい!!」と注意しなくてはならないのである。今から岩登りをするのに・・・、ましてや今から長女にビレイしてもらわねばならんのに、縁起でもなく「落としなさい!」は無いなぁ〜(^o^;)と思ったからだ。

  
3KNスラブの核心ピッチも、この1P/IV+である。皆、上手く登った。
  

2Pを登る
  

 今回リードする私に、長男と長女がつながり、長女に次女がつながった。私のビレイは終始長女に任せ、長男・長女、そして次女の順で登らせた。長女は自分が登りながら、私の指示した所には次女につながるロープをクリップした。ギアの回収は、ピン側を外すだけで、ロープ側はそのままぶら下げて上がるように決めた。ビレイ位置に着くと、私が子供のロープをインクノットでセルフビレイにとってやり、子供は自分のスリングでバックアップのセルフビレイをセットさせた。
 一番、手間と時間がかかるのは、ロープの処理である。私がダブルロープでリードし、子供は1人ずつ登る。説明しにくいが、判る人には判ると思うが、私がフォローをたぐったロープは、1人ずつ私の登る逆向きに手繰られる。次の私のリード体勢には、手繰ったロープを子供につながっている方から手繰りなおさないとイケナイ作業がある。その後、次女をさらに確保するので、その間、長女・長男は2本を同時に手繰って行かなくてはならない。ん・・・説明しにくいナァ(^^;)。
 ・・・と言う事で、少し手間取るものの、子供で解決出来る程度にロープ操作を指示した。

  
3P、広いスラブを快適にガシガシ登れる!
  
とにかく、何処でも寝る長女・・・(>_<) 4Pを上がってきた長男
    
4P、妹のロープを引きつつ登る長女。 4P、そして次女。上手な登りだ!
     

 4Pの終了点は、快適なテラスだ。しばし、水分補給と行動食・・・おやつまで食べてワイワイ言う。ずいぶん賑やかなチームである。緊張どころか、大声で歌ったり、「山響」のまねをしたり・・・。
 「あと2ピッチ!ほら気合い入れて行くぞ!」という私に、元気な声で「ハイッ!」というものの、すぐふざけはじめる。「こらぁ!お父さん、上に行くぞ!いいなっ!」という言葉が、子供には『上→天国』『行く→逝く』と聞こえる(-o-;)らしく、「えっ、お父さんが上(天国)に行く(逝く)んだってぇ〜!!」「私達は、ここに取り残されてどうしたらいいのぉ〜!」と、また騒ぎ出す。そうこうしている時、遠くでカラスが鳴いた。それを聞くと、またまたまたまた子供たちは「カーカー。」と、うるさく鳴き始める。一羽しか飛んでいないカラスが、100羽で鳴いているみたいだ!!まったくもって、誰の子?なんだと・・・親の顔が見たい(-_-#)。

  
  
5Pを登る、上から小6長男・高1長女・中2次女。高度感がいい!
  
登りあがってきた子供たち・・・d(-_^)good!!
    
     

 終了点となった稜線。それぞれ、私の指示通りに自分の役割りを果たしてくれた。沢登りの時も思ったが、終ってみれば何の危険も感じる事無く、当たり前の様に思えた。それは、多分今までに家族で積み上げてきた多くの経験によるものであると確信している。無謀かな?と思った【家族全員での第一スラブ登攀】の夢が、少しずつ現実味を帯びてきた気がする。しかし、その計画は、心身ともに成長してきている子供たちが、納得の上でないとダメだと思っている。

 

この日のベストショット?(^_-)〜☆ 長男と長女
  
下降路そばの展望所にて 千畳敷で自分の写っている写真と対面!
   

 今回は、私の強引さで連れ出した岩登りではなかった。岩に行こう!と言ったものの、本当に行きたくなければ拒否する事も出来る様になった子供たちである。しかし、少し「岩登り」へ対する意気込みが感じられた今回である。そりゃ、出会う登山者には「スゴイねぇ〜!」と言われる。でも、家族としてのチームという状況は、そういう事ではなく、自分の気持の持ち方や、そこまで出来る所まで自然に成長してきた事を感じてくれたに違いない。うわずった所も、怖がった所も無かった。やはり、私の娘も息子も最高の子供たちである。
 

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自宅7:57----門川コンビニ----比叡駐車場10:00----入山10:25----取り付き10:45----登攀開始11:10----4P13:20----登攀終了14:15----下山口近く展望所14:55-----下山開始15:00----下山完了15:35----帰路--------自宅17:50

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