2005年10月19日 「四月の風ルート・雌鉾岳/水曜登攀隊」宮崎県
風邪引いてるし、辛いナァ・・・と思っている所に、元気な小松の親分から、「明日は大丈夫ですか?」と聞かれ、「はい!行きましょう!」と答えるのが、水曜登攀隊であ〜る!グシュン(>_<) どこ登ります?と聞く前に、助手席に乗った小松の親分は、『藪山澤好』さんのHPコピーを取り出した。 「ほらほら、『そのライン取りの巧みさといい、全ピッチに渡る難度といい、雌鉾岳を代表するルートである。』と、書いてあるでしょう!」 と、笑顔で言うのである。 「書いてある・・・?、だから何なんだ!」 と言いたいのだが、”書いてある!”と嬉しそうにしている小松の親分は、当然、そこを登るつもりである。 「四月?今は10月でしょう!!」 「風?私は風邪引いて、涙目で、鼻水グシュグシュざんすよ!!」 とも言いたいけれど、すでに取り付きとなる渓谷の岩に立ってしまっていた。(-o-;)
「美しいトラバースルート」や「春はあけぼのルート」などのある取り付きへの入口を通過し、一般登山道を進むと、川に出た。強烈にV字に切れ込む谷から見上げる空は、本当に狭い・・・が、今日の青空には一点の雲も出ていなかった。そこから先へは、初めて足を踏み入れたのでワクワクが止まらない。
水際に、たくさんのダイモンジソウが僅かな風に揺れていた。本当に澄んだ水が流れている。最近始めたママのパートで、水曜日の朝は、出来る限り娘達を駅に送って山に向っている。10時45分、その取り付きに到着した。遅い到着だが、日が暮れる前には確実に岩場を抜けるつもりである。 立ちふさがる、正に「絶壁」・・・。青い切れそうなスリングと、錆びたリングボルトがケラケラ笑っている様に垂れている。ピンを目で追う・・・。良く見れば、あれがホールドだろうか・・・。あれがスタンスだろうか・・・。イメージしてみれば、リングボルトに全体重を乗せぶら下り、1cm程度のシワを利用して、ハンド?フィンガー?トラバースである。ありそうなスタンスも、遠い。それより、1〜3の坊主が見えないほどのきつい傾斜の中、何を頼りに上に行くのか・・・、そしてこの究極でのトラバースは・・・。
最初のピッチで、このルートの素晴らしさを知る。スラブと言うのだろうか・・・。しかも究極にしてトラバースである。トラバースは、リードもフォローも落ちれば同じだけ落ちる。しかも、第一関節以下のホールドで指だけでトラバースする。ここにルートが引ける事を信じ開拓された方の精神は、正に鉾岳にしてこのルートありと感じられたのであろう・・・。折りしも谷から見える青空の素晴らしさと言ったらこの上なしである。 トラバース後の直上も気を抜けない。私には、この直上3mが厳しかった。不安定なビレー位置にたどり着いた時、始まったばかりのこのルートが、たまらなく手強いものに感じてしまった。しかし、隣で「厳しいなぁ〜!」と言いながらも、嬉しそうにしている小松の親分を見ていると、「上にいかにゃしゃ〜ないなぁ〜!」と思わざるを得ないのである。
2Pは、出だしが結構キツイ!2ピン目を過ぎると少し楽になるが、「少し」である。気の抜けないスラブ登りを楽しむ?と、続いて3Pは、ずいぶん楽になる。スッタカ登れば、松の木で大休憩となる。
3P、唯一IV級グレードの楽勝ピッチから見上げる。楽勝と言っても、支点1本で40mロープを延ばすのも、怖いと思えば怖いが、今までのキツさを思えば、やはりスッタカタァーと楽勝に感じるという訳である。 松の木のテラスに立ち、しばしルートを見定める。4P終了点の平行ピンが判らず、あれこれ押し問答をするが、とりあえず行く!という小松の親分を確保する。「く」の字に登るのは、訳有りで、微妙なバランスで左斜めに行くと、今度はもっと微妙に右斜めに行き、小ハングのフレークをアンダーでとると、ハング下の暗がりに、古いリングボルトの平行ピンが表れる。
今週末は、義弟の結婚式で大阪行きだなぁ〜!なんて、厳しい所に来るとフト思ったりする。7Pのコーナーレイバックから上に乗り越すのは、正味パワーが必要だった。右のスローパー気味のホールドを胸に引き付けて耐える・・・。グッと耐えて、左の遠いホールドに指先がかかれば抜ける事が出来た。抜ける瞬間、両親も他界し兄弟もいない1人っ子の私に、義弟が結婚したら妹が出来るって事だなぁ・・・と考えていた。 続き8P、小松の親分は楽しむようにフリーでのムーブを探りながら、そして繋げながら小ハングを乗り越して行った。しばし数分が過ぎ、樹林帯へ到達したのだろう・・・ロープの動きがそう語っている。相棒の動きは、ロープを通して多くを理解出来るようになった。だから、写真を写すことが出来るのであるが、そのロープもずいぶんくたびれて来ている。「登って来い!」の声が響いた。 ん〜どう登る?などと少し考えながら、スラブをニッチニッチとずり上がる。右は小松の親分が抜けたフレアークラック、左はピンが打たれたフェース・・・。クラックに耐えながら、フェースの支点に下げられたヌンチャクを回収するのか!と思う間もなく、アブミで直登だな!と直感である。結婚式の挨拶は、考えておくより、当日、その場で自分が何を感じ、何を話すのか・・・、そして、その方が本当の気持を伝えることが出来るはずだ!と、思いながら、小ハングを超えた。
水曜登攀隊『初見ルートチャレンジ第3弾』である。そのルートの凄さ・素晴らしさに酔いながら、山岳会のnama会長の携帯に電話をした。
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