水流渓人「hot-news」

2005年10月12日 「春はあけぼのルート・雌鉾岳/水曜登攀隊」宮崎県

 

   
水曜登攀隊・・・鉾岳の初見ルート挑戦始まる!!
   

 ママのアルバイトの話は、今月の初旬に突然やって来た。その巡ってきた話を相関図にすると面白いのだが、簡単に言うと『地区子供会会長→子供会会長会副会長→PTA会計→PTA副会長→行政主催の男女共同参画の会』と発展?していく彼女の活動範囲の中から、市役所の関係課に依頼された話が、ママの所へ来た訳である。16年ぶりの仕事だが、その仕事と平行して国勢調査員の仕事や、男女共同参画の会会合が重なり合って、凄まじい忙しさとなっている。それがきっかけで、私も家事や娘を駅に送るのを手伝っている。だから、水曜日が完全に「岩登り」だけに没頭できる・・・なんだか有り難いような寂しいような状態である。それだからと言ってはなんだが、自宅を6時25分に出て娘らを駅に送った足で、いつもの待ち合わせ場所に向かうのである。つまり、水曜登攀隊の集合時間が「都農神社7時」といういつもの時刻が30分遅れたのである・・・・とまぁ、どうでも良いような事だが、私にとっては深い意味のある状況の中でのクライミングであるという事である。

  
雌鉾の1枚岩は、幅400m・高さ200mにも及ぶ!
  

 鉾岳、それはいつもの比叡山より奥となる。比叡の岩場を右に見ながら、綱の瀬川沿いに上鹿川の集落を目指す。途中、台風14号の爪痕を見ながら、迂回路を通り、かの有名なクライマーの宿「鹿川・庵」横にひょっこりと飛び出す。「鹿川・庵」にはいまだにお世話になったことは無いのだが、九州だけでなく全国からクライマーが訪ねやってくるのだから、その人気は周辺の岩場だけでは無い様な気もする。ここからの眺めが私は大好きで、しばし車を止め、掛け干し米のヤグラ越しに、鉾岳の威圧的な岩場が尖った二本角の様に見える。折しも朝日が漂う雲と鉾岳を、それはそれは恐ろしくも怪しいたたずまいに映し出していた。そのまま少しし進むと、登山口となる鹿川キャンプ場である。
 

またまた、カメラを忘れて携帯カメラの写真となる。
  
「鹿川・庵」田には賭け干し米、向こうに鉾岳 登山道で、マムシのお出迎え(^^;)
     

 登攀具にヘルメットにザイルと・・・、リュックに詰めると結構な重さである。取り付きまでは、約40分。吹き出る汗と、鈍りきった体力と、まだ痛む左足と、たくさんの要素がミックスしてアヘアヘと歩いていく。要は、クライミングなぞするような体重・体型ではないのであって、もっと究極的な見地に立って冷静に物事を判断するなら、「山歩き」にも向いていないのかもしれんなぁ〜!と、正直でもあり弱気でもある気持ちで取り付きを目指した。途中、休憩した岩の横には立派な「マムシ」がグジュグシュといた。
 しかし、鉾立谷を吹き上げてくる風のなんと気持ちの良いことだろう・・・!さっきまで、思っていた弱気な気持ちはどこかに飛んでいったのか、小松の親分に向かって「こんだけ風が気持ちよく感じられるのは、やはり山を歩いて汗を流すからですよねぇ!」などと、いっぱしの「山人」みたいな口を叩いていた。さらに、スラブの取り付きにたどり着くと、「さぁ、登ろうかいね!」と思うのだから、いい気なものである。

   
よっ!いつもの親切な新設看板 1P、右の松の木へ
  

 「春はあけぼのルート」は、山の会の会長が好きで良く登っている。取り付きは、「美しいトラバースルート」と同じで、そこから右にグイィ〜ンとへんてこな体勢で松の木を目指すのである。小松の親分が、とてもぎこちない登りで、めずらしくオタオタと登り始めた。しかし、時折みえる青空は、それはそはれは真っ青で、吹く風も涼しくて秋の気配十分のクライミングに、胸躍るばかりのセカンド水流ちゃんである。
 最初の3ピッチは、以前、川キョンとも登っている。一応、2ピッチはリードもしているのであるが、意気込み充分の小松の親分は、ズイズイと3Pの終了点で待ち構えていた。

     

4P/50m/5.10b 4P核心部
     

 いよいよ、4Pからは傾斜が強くなる50m・5.10b(VI+〜VII-)のスラブである。5mほど登ると、中央バンドと交差し、いよいよ究極のフリクションクライムが始まる。チトA0を混ぜてのリードとなった小松の親分から、「結構、きびしいですよ!」と付け加えて、フォローを登りを促す声がかかる。じわっじわっと結晶粒に立ち込む。とにかくシューズの親指あたりのフリクションだけが頼りで、立ち込む。当然、ガバなどどこにもないので、指の爪も結晶粒や凹みみたいに見える所を、ホールドと思い込みずり上がる。それを繰り返して30m耐えると、ようやく傾斜が緩み、ロープ一杯となる平行ピンを迎える。よく、抜いたぞ!と、開拓された方への賛美の声を上げた。

     

鉾立谷
  

   
釣鐘山方面

 

  5Pは、20m・5.8(VI-)のスラブから草付だが、草付手前の倒れた木へたどる所が、実に難しかった。低い位置のホールド・スタンスで耐えて立ちこまないと立木へ届かない。ワンポイントだがVI-級に匹敵する。しばし、小休憩をとり行動食を口にした。
 6P、30m・5.9(VI)アンダーのレイバックから始まる。見た目、下にずり落ちそうだが、がっちり効くアンダーのクラックに安心してスタンスを決める事が出来る。しかし、左に回り込み、草や木が埋まったクラックに、結構ヘンテコなムーブを要求され、クラックを使うのか使わないのか、スタンスは外やあっちやになりずり上がる。
  

5P/20m/5.8 6P/30m/5.9
       

 7P、25m・5.10d(VII+)である。見るからにごっついスラブである。ホールド・スタンスは、私には有効に見えないザラつきを拾うのだが、とんでもない。リードする小松の親分も4ピンまで、とうとうA0になって抜けた。そこから少し緩くなるが、右上するバンドからルートを見失い、行けそうも無い直上にトライして必死の思いでクライムダウンした小松の親分・・・。ずいぶん時間をかけて、しかたなく右のコーナー気味のきつい黒いコケコケしたスラブを微妙なバランスで登り、草付を掴みあがり立木でビレー。しかし、それが正規ルートであるみたいだった。
 リード者の登りを見ていたら、一応準備していた「テープアブミ」を潔く取り出すのが、かわいい?水流ちゃんである。おかげで、なんとかパンプせずにバンドにたどり着き、ロープに従い立木へたどり着いた。

     
もうすぐ、紅葉で飾られる 7P/25m/5.10d
     

雄鉾の壁を背に、紅葉が始まっている。

 水曜登攀隊の「初見」「挑戦」の意志どおりの登攀であった。めずらしく、小松の親分から先に握手の手を出した。お互い、恥ずかしがり屋なので、感動のクライミング後でも、抱き合ったりはしない。(^_^ゞ

 終了点が下降路である。ギアやロープを仕舞いながら、今日の登攀を思い出しては話し合う・・・d(-_^)good!!。所々、色づき始めている葉を目で追いながら、フィックスロープを下降した。  

登山日記のページへ
自宅6:30----佐土原駅----都農神社7:30----鹿川キャンプ場10:00----入山10:20----取り付き----11:00----登攀開始11:20----終了点15:20----下山16:20----帰路----日向お舟出の湯----自宅20:00

 Copyright (C) 水流渓人 All Rights Reserved  

BACK

inserted by FC2 system