水流渓人「hot-news」

2005年7月13日 「ファイナルスラブ・スーパールート登攀」宮崎県/比叡山

 


本当は「スーパーファイナルルート」というべきか・・・
  
水曜登攀隊、初見ルート挑戦の旅はまだまだ続くのだ・・・(^^;)
 

「どうでしょう・・・天気?」
そう、電話があった。先週は雨で中止にしていた。
「どうも曇りの予報みたいですけど、行きます?」
「何時にしましょう?」
「都農神社に4時半でいいですか?」
そう言っておきながら、朝、自分の携帯電話の呼び出し音で起きた。小松の親分から、
「あのぉ〜、寝坊したんで30分ぐらい遅れてしまいそうです。」
との声・・・。
「いいですよ!私も今起きたから、5時半に変更でお願いします。」
なんのこっちゃない、呑気なものである。

  
さぁ、入山しよか(^^) 取り付き到着(-_^;
    

 挑戦するのは、「ファイナルスラブ」ルートである。
 取り付きが「TAカンテ」「ナックル系」のルートより更に奥となる。以前、勘違いして登った「浪漫への避行ルート」と、落ちた?折れた?「甘草の道ルート」の中間部に位置する。このスラブの凄さは、左右に横から眺めて感じていたが、まず私の意識の中での核心は、とりあえずそこまで行くアプローチ道の急な登りであるq(-_-)bad!!。歩き始めて、即座に息が上がってしまうのが水流ちゃんの特徴である。小松の親分に遅れる事、5分。取り付きでロープをさばいている小松の親分のそばに、ドサッと投げ込まれたふやけた荷物の如く倒れこむ水流ちゃんは、一言・・・「大休憩、お願いします。!!」である。ソンナモンダ(-o-;)

  
比叡I峰南面


          1P 45m 右/VII-(スーパー) 左/VI-(ノーマル)
          2P 45m   IV+
          3P 45m   V

I峰南面の最深部となる「ファイナルスラブ」ルート
 
取り付きからは「甘草の道」〜「ナックルスラブ」〜「TAカンテ」ルートが見えている。
  

 充分な休憩の後、いよいよ核心となる1P/45m/VII-へ挑戦開始する。比叡には珍しいペツルのボルトが2本見えている。近くには1986年の開拓当時?のリングボルトがある。それにしても、ノッペリとして傾斜の強いスラブである。2mほど上にあるペツルにクリップするには、どうしてもこのスラブに立ち込まなくてはならないが、どこにも弱点が見出せないまま時間だけが過ぎる。何度も離陸出来ずに・・・あるいは2手目に耐え切れず、小松の親分はずり落ちる。落ちるたび水分を含んだ土と枯れ草を踏む事になり、シューズがぬめる。信じるは靴底のギリギリの摩擦と、指紋がとらえる岩のザラつきだけだ。どれだけ時間が過ぎただろうか・・・、ついに小松の親分は、その究極のフリクションに耐え、右の浅いアンダーと左の数ミリの外形したカチを取った。すでに消耗した筋力は、おそらく限界に来ているはずだ・・・震えるスタンスと腕で鋭く支点にロープをクリップした。

  
デリケートなスラブは45m続く さらに傾斜はきつくなる
     
左右にルートを探りながら、緊張のスラブ登りが連続している。
  

 本当に厳しいスラブである。A0になったが、「上へ抜ける」根性は凄い。スタミナも凄い。素晴らしい小松の親分のリードで、私が続いた。
 何度トライしても、私に最初の支点へたどり着くことは出来ない。「青ロープ固定でお願いします。」と叫ぶと、掴みあがってアブミをかけた。一段ずつ上がり、ハンガーボルトに立つ。アブミは1本なので、外して右上のリングボルトの首にフィフィをかける。更に上の段に立つ。少しミリほどのシワにスタンスをとり、信じ、さらに上のボルトにアブミをかける。支点はアブミでやりすごせるものの、フリーでしか対応できない所の厳しさは、本当に最高のスラブかも知れない。どうしても右の支点に移れない所があり、とうとう片方ロープ固定の振り子状態となる。傾斜のきつさは、見える足のスタンスと取り付き位置が同時に見えている感じだ。おそらく、蒼白の笑顔でビレー位置に着いたに違いない・・・再び大休憩を所望する。

  
大休憩は、靴もメットも外す・・・ ビレー位置の右方向に、敗退時のカラビナ
  
  
2P/45m/IV+ このくらいが、私には快適なスラブだなぁ・・・。
  

 小松の親分の登る頭上に、あの滑落・骨折した3Pの岩が見えていた。「登って来い!」と聞こえる声に、「あのスリングとカラビナを回収してから登ります!」と、返事した。
 フォローし上がったビレー位置は、あの日応急処置をして、ロープダウンで降ろしてもらった所である。そして目の前にはあの岩である。でも、登るために来ただけである。
 私が落ちたという事実だけが、初見で取り付こうとしている小松の親分に緊張を与えていた。取り付くと、じわっと立ち上がり最初のピンにロープをクリップした。少しホールド・スタンス・ムーブを探る。やはり斜めホールドを両手で取った。同じだ!と思った。そこから、小松の親分は、左上の甘いクラックにフレンズをセットした。続いて縦の岩角を右で掴もうとして、外形したスタンスが滑りかけた。体勢を建て直し、両手で縦ホールドを引き付け、右上のスローパー気味のガバ?を取ると、思い切って上に抜けた。後は階段状。
 フォローしながら、自分はリードでいけるだろうか?との疑心もあったが、同じ体勢で上りあがると、あまり感動もなかった。とりつかれていた訳でもないので、吹っ切れもしていなかった。案外、気持は冷めていて、次はどこを登ろうかナァ・・・なんて思うだけだった。

  
3P/Vの核心を越えて・・・ 私も核心を越えて下を写してみた。
 
  

 たかが3Pを登っただけだが、その中にはたくさんの感動と思いが残っている。だらけきったこの体で、よく登れた!と感心している。終了点から、稜線の登山道まで、ほんの僅かの登りだが、息は絶え絶えで、左足はギクシャクしたまま痛みだけは多い。展望所のピークで記念写真を写してみた。下山道の無様な歩きを想像しながら・・・。
 それでも小松の親分は、「来週はどうです?」と聞いてくれる。有難い。

体重76.5kg(-o-;)
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