水流渓人「hot-news」

2004年12月1日 「水曜登攀隊/比叡の果てルート/比叡3峰」宮崎県
 


 

関係ないけど、「水流渓人」は「つるけいと」と読みます。
「すいりゅうけいじん」ではありません。
別にどうでもいいことなのですが、突然言われると訂正できない気の弱さもあるので・・・
 
いよいよ比叡3峰を制覇?

 
 そう・・・、小松の親分は確かに言った。「来週は、少し軽く行きましょうか!」なんてね・・・。FYKルートラストフロンティアルートと厳しい登攀が続いたのだから、今日は少し楽かナァ・・・なんて、楽を考えさせたら天下一品の水流ちゃんは安心していた。
 いつもの都農神社から、小松の親分が乗車した。途端切り出した第一声は、「今日はどこ登ります?」、水流ちゃんに一応聞いておいて返事する前に、「比叡の果てルートにしましょうか!」と、用意した答えを言った。「いいですよぉ・・・。」と、実に嬉しそうに・・・、悪魔でも
イヤイヤあくまでも嬉しそうに・・・、ホンマに嬉しそうに返事をする水流ちゃんなのであります。
 思い出せば、小松の親分との付き合いも、もう14年になる。考えて見れば、カヌーで球磨川を下ったりした時もずいぶん世話になっている。カヌーでは国体の県代表にも選ばれた男・・・。撃沈する荒瀬で何度も救ってもらっている。そして、14年経ち、今はクライミングでザイルを組ませてもらっている。まっ、「ツー」と言えば「カー」の仲である訳だが、彼のおかげでこれだけたくさんのルートを登らせてもらっているといっても過言ではない。
こらこら!過言?その通り、お世話になりっぱなしではないか!!(^^ゞ
 

1Pのレイバックへ ハンドトラバースを抜け、平行ピン

1Pの終了点から谷底を見る。ア゛ーいいチモキ!!

   【比叡の果てルート】3峰
  *1P/5.10a(VI+)/30m (比叡の果て・左方カンテバリエーション)
     
やさしいフェースからコーナーをレイバックで登り、ハング下を左へハンドトラバース
  *2P/5.7(V+)/25m (比叡の果て・左方カンテバリエーション)
    短い凹角から段違いを右に越し、スラブのクラックを登る
  *3P/5.9(VI)/30m (比叡の果て)
    スラブの左上から傾斜の急なフェイス
  *4P/5.10d(5.10a・A1)/50m (比叡の果て)
    フェイスからスラブ、小ハングを越えてスラブから凹角の前傾部からビナクルのクラック
  *5P/5.10c/35m (比叡の果て)   
    小フェイスからスラブを直上し、右のカンテ沿いを登る
 


2Pの段違いを乗り越す

  
 1Pは、以前に登った「左方カンテバリエーションルート」と同じである。・・・であるのだが、ハンドトラバース後の乗り移りが難しい。スタンスがスメアのまま、持ちにくいホールドを頼りに体重移動・・・ビレー点手前のピン(上の上の写真)も体勢がのけぞりそうになりながら少し下のスタンスに移り小テラスへ上がる。正直に言え!と言うのなら言っておく!ただし、言うのだから良く聞け!
「水流ちゃんは、ヌンチャク握りで振り子トラバースをやっちゃいました!」
聞いたか!この野郎!ざまあ見ろ!だぁ・・・。強がれない強がりを言っても仕方ない・・・少し寂しくなってきました。
 
 さぁ、話を先に進めよう・・・。2Pである。段違いを乗り越す所がヒヤッとするが、楽しいぐらいの『ヒヤッ』である。しかし、スラブに出るとヒヒヤヤッッとする。そこに走るクラックを登るのが怖くて『ヒヒヤヤッッ』とするのではない。スラブについた落石の痕跡にである・・・。そういえば、白亜スラブの落石がここに叩きつけられ噴煙を上げたのを見た。確かに・・・つぶらな水流ちゃんの瞳で、確かに見た。以前に登った時の写真と見比べても、痕跡は増えている。だから、『ヒヒヤヤッッ』とする。微妙なクラックは、水流ちゃんでも快適である。
 

2Pのスラブに走るクラック 3Pへ向かう小松の親分
    
 
 
4P/5.10d 緊張が50mの一杯続く。ハングを乗り越す。

 
 3Pは、小松の親分がオンサイト・・・喜びの表情である。ここからが初見のルートとなるが、初見となると妙に嬉しそうな顔になる小松の親分と、つぶらな瞳だけど目がうつろな水流ちゃんである。実に微妙なトラバース気味の左上から、急だがなんともたのしいフェース。水流ちゃんの靴が、勝手にピン1本踏みフリーにての解決は出来なかった。その内、買い替えたんねん・・・この靴!(-_^;
 悲しい事に、ピンを踏みたがる靴のせいで・・・フリーを逃した可愛そうな水流ちゃんであるが、4Pを見てのけぞった(◎_◎)。頭が白くなり、腰に構えた【3段梯子】を、何度も見ながら小松の親分を確保した。小松の親分は、少し時間がかかったものの、2ピン目だけアブミみたいなものを使い、後はA0を交えながらピナクルから姿を消した。
 「登って来い!」の言葉に、水流ちゃんのフォローが始まる。すんごいフェースだ!踏ん張るにもスタンスが無い(@_@)。どこかあるんだろうけど、私には見えないし利用出来そうなものは無い。そうこうしていると、ピンに【3段梯子】が、勝手にぶら下るのである(^^ゞ。仕方ないので足を差し込む、梯子なので上へ登らなくては役目を果たさない。あれっ?と思う間もなく、次のピンを見ると【3段梯子】はぶら下っているのである。不思議だ・・・。実に不思議だ・・・。私は、先ほどから自分を疑っていた。誰かが、ピンが来る度私の腰のアブミ・・・でなく【3段梯子】をピンにぶら下げているのである(^^;)。そうこうしている内に、上のヌンチャクをつかんだ右手が、私の体をハング上のスラブに持ち上げていた。
 続いて、複雑な凹角である。私は、この時考えてみた。いったい誰が【3段梯子】をピンにぶら下げているのだろうか・・・と。少し、疑っている事があった。ひょっとして・・・と、思い当たる節があるのである。丁度、立ち込んだ所の少し上にピンがある。私は、客観的に状況を把握しようと思った。その不安定極まりないスラブの途中でである。そして、ピンをジッと睨み付けた。するとどうだろう・・・。ピンに【3段梯子】をぶら下げていたのは、比叡の妖精ではないか・・・ソンナワケネェーダロ(-_-#) ぶら下げていたのは、水流ちゃんのかわいい右手ぢゃありませんかq(-_-)bad!!あー驚いた!オマエアホトチャウカ!(-_-メ)
 そんなこんなで・・・・・・って、どんなこんなや?えーっと、『そんなこんな』とは、『水流ちゃんのかわいい右手が、ピンに3段梯子をぶら下げていた。』という事で、これは事実を重く受け止める必要があると私は思う訳でありまして・・・アノナ、いったいこれは何の話なんや??もう良かろう!それぐらいで・・・。勝手にピンに乗る迷惑な靴と、勝手にピンにアブミを下げる迷惑な右手のおかげで、なんとか、4Pをクリア出来たのである。結論として締めくくるならば、この4Pの攻略方法として有効なのは、フリーで登れる技術を磨くか、勝手にピンに乗る靴を履き、勝手にピンにアブミを下げる右手を使う事である。?シツコイ(^o^;)
 

5P、完全なフリーを狙う小松の親分 成功!してやったり!の万歳。
     

終了点にて、いつものイェーィのピース!実にくさい構図。

  
 5P、前回のラストフロンティア登攀で、この5P/5.10cを、A0になってしまった小松の親分だが、解決の糸口は見えてきたと話していた。今回、実に早い動きで核心のピンへクリップすると、すかさず上へずり上がりマントルを返した!後は簡単なカンテ横を登り、フリーでリード成功した。
 私も、密かに決心していた。勝手にアブミをかける右手の用心の為に、アブミを仕舞い込んだ。フォローなのだから、ここは思い切り行くぞ!と、気合い充分に取り付く。頭を「アッ、靴をなんとかしなければ・・・。」と思ったときにはすでに遅く、核心のピンを乗り越す時、踏ん張れずまた靴が勝手にピンを踏んだ。しかし、前回はアブミ使用でなんとか上がれたこのルートを、1ピンのA0だけでクリアできた喜びは大きかった。
 14時、登攀終了。終了点でギアを片付け、昼食を食べて下山した。小松の親分が「これで、とうとう比叡3峰のルートを制覇できたぞ!」と、大喜びで言った。水流ちゃんとしては、「これで、とうとう比叡3峰のルートは、左方カンテノーマルだけになったぞ!」である。折角だから、おまじないに取って置こう・・・なんて粋な事を思ったりもした。しかし、せめて自分のリードで解決したい気持も充分にある(^_^ゞ
 


帰路、2峰のショートルートエリアを覗いて見た。ニードルの眺めがいい!

 小松の親分は、正月は東北にスノボーに行く予定だと話していた。私は、今年は家族でママの実家である大阪へ帰る事になっている。厳しい登攀が終わり、上へ抜けた興奮が落着くと、少し日常会話が進む。あれこれ話した後で、「12月も水曜日に休みを合わせたよ!」と、助手席の小松の親分はニタリとした様な気がした。
 

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自宅6:30----都農神社7:10----比叡水場9:10----登攀開始9:40----終了点14:00----昼食・下山----水場到着14:50----日向・温泉----自宅着18:20

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