2004年11月17日 「白いピン・・・って言うたら【FYKルート】/比叡1峰」宮崎県
水曜登攀隊は、先週(11月10日)は雨で比叡行きを中止した。川キョン大先輩(11月3日に白亜スラブをアブミなしで登ったので「先輩」→「大先輩」となった。)も仕事が休みだったので、3人で3峰の「ラストフロンティアルート」を挑戦する計画だった。 10日の朝起きると、雨・・・。しばらくして小松の親分から 「今日は無理みたいだから中止にしましょう。」 と電話が入る。『こりゃ大変だ!』と、あわてて川キョン大先輩の携帯にコールするが、いつまでたっても電話に出ないので『夜勤明けで熟睡なさっとるわい!』と思っていたら・・・・・、玄関のインターホンがピィ〜ンポォ〜ンと鳴り、大先輩が立っていた。 「あれっ、今日は行かないのぉ〜?」 と満面の笑みである。庭にはシトシト雨が降っている。丁重にお帰りいただいた。 〜そんな先週・・・〜 そして、今日。もちろん快晴。しかも無風である。こんな日に川キョン大先輩はいないが、水曜登攀隊は、少し遅い集合で比叡に向かった。どうも指の不調で、小松の親分は「ラストフロンティア」と言う言葉を使わない。内心、水流ちゃんは少し嬉しかった。『今日は楽勝やん!』と、何度もつぶやきながら・・・小躍りしながら・・・デリカを走らせていた。 「結局、今日はどこを登ります(^-^)?」 やはり気になるので、日向市を過ぎた辺りで聞いてみた。 「ん〜。やっぱり指に自信がないから、3峰は止めておきましょう!」 と来たではないか・・・! 「どこにしましょうか(^-^)?」 よしよし、リクエスト出来るなら・・・と 「失われた草付き・・・は、まだ登ってないので行きたいけどぉ(#^.^#)。」 と言う私の意見を笑顔で聞いていた小松の親分から出た言葉は・・・ 「隣のFYKルートをやりましょうか!」 え?えっえ??(◎_◎)、1峰南面で一番ルートグレードの高い所ぢゃありませんか(^o^;) 「えっ?そ、それ・・・いいですねぇ(^^;)」 と、答えるいつもフォローの水流ちゃんなのでありまする(-_^;
比叡の駐車場で支度をして取り付きを目指す。それにしても、いつも息の上がるアプローチである。下部4級でウォーミングアップを兼ねロープを結ぶ。ガレを登り基部へたどり着いた。左未踏の「失われた草付き」、右「ナックルフェイス」の間・・・・・それにしてもキツイ傾斜と、見るからに乏しいホールドに圧倒される。 小松の親分にしても、決して完全なフリーで登れる5.10cの1Pではない。でも、彼が取り付く気持も理解している。去年から始まった水曜登攀隊@西都山岳会であるが、「初見」にこだわる・・・、いやそうせざるを得ない状況であった。 所属会には尊敬すべきアルパインクライマー「nama会長」がいる。会長が行った「クライミング講習会」にも「アルパイン講座」にも参加できない平日休みの我々である。なんか、見よう見まねのクライミングであるのだが、「初見」と言う行為は我々を大きく育ててくれたと思っている。それがいつしか「挑戦」となり、「限界への挑戦」へとなってきた。本当は自信なく「FYKルート」の名を口にした小松の親分である事は判っている。フォローすらまったく自信がなく同意した私でもある。しかしそれは、今まで水曜登攀隊が登ってきたルートすべてが、初見であったという事実もある。「FYKルート」も、いつもの事・・・と、不安・恐怖すべてを封印し、「挑戦」と「闘志」に変え、終了点を見据えた。
4Pは、水流ちゃんがピーピー言えない程、 無言で、必死で噛り付かないとイケナイ程、 すんごいフェースだった。 説明なんかしちゃあいられないよぉ・・・
「初見」にこだわる水曜登攀隊は、1峰南面の卒業に「FYKルート」を暗黙に決めていた気がする。今回、それにこだわる事無くルートを選んだ。安全にケガしないように上にぬければ・・・と確認し合いながら!そして、「楽しむ」事こそ長く続けていく秘訣なのだと確認した。「初見」での挑戦は、いつしか「限界への挑戦」という聖域に踏み込んでいたのかもしれない。「限界への挑戦」という行為は、もちろん素晴らしく魅力的なものだと思う。その挑戦を続け、岩を離れていった沢山の人もいる。岩を登るという、ごくシンプルで熱くなれる行為は、案外「自己内面への問答」なのかも知れない。 このルートは、開拓されたFYK(福岡山の会)の名がつけられている。開拓者のお1人、KYさんに登り終えて感想をメールしてみた。なんせ、白ピンの打たれ方たるや絶妙であり、かつトリッキーである。1本1本に、開拓された方のこだわりと、岩を愛する気持を感じてしまう。そう感じた思いをどうしても伝えたかった。比叡1峰南面に、「ナックルフェイスFYKルート」あり!である。私に、ここをリードできる時期が、果たして来るやら・・・・・ムリムリ(^^;) ナックルピークでロープを解いた。遅い昼食を食べながら、小松の親分は 「上にたどり着けて良かったぁ〜!」 と、ぽつり言う。どこがどうのという会話はおそらく温泉に入った頃だろう・・・。それほど厳しいリードであったに違いない。フォーローで、しかもA1(今回、6箇所使用)でしかフォロー出来ない私であるが、それでも大満足だ。右足首は捻挫したみたいに痛かった、ひだりのふくらはぎは痙攣しそうになった。なさけないが、それでも達成感充分のルートであった。
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