水流渓人「hot-news」

2004年4月21日 「鉾岳/美しいトラバースルート登攀」宮崎県

雌鉾岳「美しいトラバース」登攀
初見にて人工ルートへ挑戦!!

 「休みになったよー!」と、川キョンからメールが入った。前週の土曜には、所属山岳会の会長と、比叡3峰のルート開拓の手伝いに行っている川キョンは、すでにクライミング満腹状態なのか・・・、「歩きでもいいよぉ〜!」と、書いてあった。ちと悔しいので、「鉾岳の美しいトラバースへ行くべぇ〜!」と、宣言メールを返しておいた。仲間内では、鉾岳のルートでは「大長征ルート」が入門的になっていて、案外、知名度高い「美しいトラバースルート」を完全に登った報告は聞いていない。7ピッチ・8ピッチに人工が混じる。記録によれば、1985年にフリー化されているらしいが、7〜10ピッチは、初見での挑戦となるだけに、誘っておいて不安も多かった。

鹿川キャンプ場方面へ右折 キャンプ場から歩き始め、林道から右折し登山道へ入る。
   
歩く事40分、取り付きへの看板左折 見えてきましたH300m×W400mの大スラブ
   

たまにゃ、自分の写真も写しておくべー!当然、足は長い(^o^;)
 

 2年前、そうクライミングを初体験した年、先輩に連れて来てもらった。怖さの知らない、オールフォローの初心者だった私は、調子に乗っていたのかもしれない。3年目になる今年、怖さを感じてならないクライミングである。リードすることの「価値」や「楽しさ」を先輩達に聞くが、正直怖くて仕方ない。ただ、取り付けば、その怖さを封印できる精神も育っている。その内、身動き取れない恐怖に押し潰されてしまうかも知れない予感もある。臆病・・・、そう、臆病なのだと思う。比叡や、雌鉾に、数ルートだけでも登れるルートが存在すれば、それを繰り返し暖めて登ればいいかな?!と、思い込ませようとしている自分も感じているのだ。
 なのに、口では「初見だけど、やってみるぞ!」と追い込むような事を言ってしまう。取り付きに立ち、もう戻れない状況が成立した。

   
1P・45m・IV-/水流リード 2P・45m・IV/川キョンリード
 
3P・35m・IV/水流リード 4P・35m・IV-/川キョンリード
   
5P・35m・IV+/水流リード 鉾岳谷を見下ろす。所々にアケボノが咲く。
   

6P・35m・V-/川キョンリード
   
7P・40m・V A1 中間当たりから下を見る
 

 「つるべ登攀」・・・格好よい登攀スタイルだと、初心者の私は意識している。ほぼ、川キョンにクライミングを教えてもらったようなものだが、先輩と互角に登っている様な気になれる言葉である。実際、川キョンのビレーなら、自己の限界に挑戦してみよう!という気になるから不思議である。
 だから、私は黙って最初のピンにアブミをかけ、ステップに乗った。アブミ登攀は、いままでに大崩で残置アブミに乗っかったのと、比叡1スラのリニューアルルート・第二コブ岩の乗り越しに3ピン乗っただけである。操作もおぼつかない私が、リードで取り付いた。アブミの1段目に右足、2段目に左足、最上段の3段目に右足を乗せ、ホールドを探りながらジワッと立ちこみ、左足でピンに立ち、伸び上がった姿勢でようやく次のピンに届く。また、少しフリーで登りあがり、エイヤーでピンにクリップし、アブミをかけ、それを握りダウンして、下のアブミを外す・・・。腕の力も、足の力も限界に達しようとしていた。それでも、黙ったまま次ののピンを目指す。アブミに乗ることで、最大限に力を要していた事が、アブミに乗ることはレストできることであると体が気付いた時、少し余裕が生まれてきた。ついに、ピレー点に達した私の肥満体は、達成感に震えていた。気がつけば、「食料+クライミングギア+9mm50m=13kg」を身につけ、さらに10kgの体重オーバーである。そう思えば、より嬉しい達成感でもある(^_^ゞ

 
7P・40m・V級A1をリードし、川キョンをビレーする。鉾岳谷底が高度感を高める。
       
つるべだから、8P・35m・IV級A1は川キョン。
少しスリップ、少しビビリ、でも登り
テラスで喜びのおたけびを上げていた。
9P・10Pは、水流ちゃんリードで、「二の坊主」にて登攀終了。ようやく、遅い昼食を取る。
       

懸垂下降で、下降路へ
  

 「美しいトラバース」ルート/ルートグレード4級上/360m/10ピッチ
 1979年10月10日 井上修・富永仁の両氏により開拓。1985年4月28日杉山徹・宇津英雄の両氏によりフリー化される。スッキリとしたスラブを左から大きくトラバースしていく様と巧みなルートファインディングは、とても豪快で雌鉾岳の人気ルートとなっている。

 

フィックスロープの整備されている下降路は、アケボノツツジが楽しめた。
      
    
下降路から取り付きに戻り見上げる南面スラブ、達成感に包まれる一時だ。
  

 本当にルートを完結させたのか実際の達成感は思ったより薄かった。怖かった印象だけが残っている。
 「すごい充実。」と、川キョンが言っていた。上級者とでなく、【この私と・・・】というコンビだからなのだろう・・・と思った。登りは私より上手な川キョンが、少し怖そうにしていた。アブミのリードで、ビビッた。つるべ登攀のはずが、10PのIV級のリードをリタイアし、私が終了点を迎えることになった。だから、川キョンがダメなのではない。私が上手くなったのでもない。お互いの力を足して2で割っていいじゃないか!と思った。二人で終了点に立てたのだから、何も言うことはないと思った。何度も言うが、私が登れるのは彼女のビレーであるからなのだ。そんな事を考えていたら、もの凄い達成感に包まれて来た。3日経った今日も、あのスラブが閉じた目の中に浮かんで来る。

  
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6:00自宅発----9:10鹿川キャンプ場発----9:50取り付き----10:25登攀開始----14:30登攀終了----昼食----15:30下山開始----16:15取り付き位置----17:00キャンプ場----日向・お舟出の湯----19:50自宅着

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