水流渓人「hot-news」

2003年12月10日 「第3スラブルート/比叡山クライミング」宮崎県

 「第3スラブルート」
 

 有難いパートナー「小松の親分」との水曜クライミングも、2003年最後の日を迎えた。比叡へ向かう車内で、今年のクライミングを振り返る。私個人としては、「第2スラブノーマル」のV+級の初見リードが印象的である。その前後から、まだ行ったことないルートを登る意識が出てきた。小松の親分との初見ルート登攀の挑戦は、「1.5スラブルート」から始まり、「ニードル左岩稜」「浪漫への避行ルート」「奧の細道ルート」「III峰・左方カンテバリエーションルート」「ナックルスラブノーマル」「みつばつつじの道ルート」と続いた。私にVI級のリードは自信ないが、彼の果敢な挑戦には敬服するばかりである。・・・とともに、私としても同行出来た喜びは大きい。ルートを探すところから始まる「初見登攀」は、危険も緊張も満足も大きい。この喜びを味わうと、経験者の案内で行く初めてのルートより大きな価値があるように感じ始めたのだ(当然そうだが・・・)。同じ興奮と感動を味わい、語れる仲間である。(^_-)db(-_^)

   
  ルート名      ピッチ     リード
1スラ・2スラ同様 1P IV級 50m

水流

2 ブッシュ 2P --級 30m
3 第3スラブ 3P VI級 35m 小松の親分
4 4P VI-級 30m
5 5P V+級 45m
6P IV-級 30m 水流
7P IV級 35m 小松の親分
 

 第3スラブルートの取り付きは近い。駐車場から1分、第1スラブ・第2スラブ同様のお手軽位置である。(ただその分、終了点から下降路までの岩稜歩きは長いのだが・・)今年の夏、家族でクライミング体験をしたのもこの場所である。練習・・・トップロープではあるが、私はマルチルートのビレーピンにはトップロープ確保用の利用は避けたいと思っている。あくまでもビレーピンで、グランドアップで拓かれたルート性格上、登攀される方達への、あるいは開拓・整備されている方への最低の礼儀であるような気がするからだ。トップロープ用のピンは、いわゆるテンションをかける支点となりかねない。その時も、長女のビレーで登った私は、ランナウトしたまま、立木に長いフィックスロープをセットしトップロープの支点を作った。 

 
1Pを上がってくる小松の親分・・・足慣らし

 1Pは、私がリードで行かせてもらう。直上し左へ行く1スラと違い、そのまま直上する。ホールド豊富だがピンは少ない。平行ピンまで35mだが、さらにその上の立木に50m一杯でビレーする方がそのままブッシュへ行ける。いかんせん、ピンは2本(^^;)・・・50m目一杯ロープを引くと、9.6mmロープでも結構重たい。登り上がってきた小松の親分には、そのままブッシュを2スラの基部まで行ってもらい、後を追う。ここからが2人の未踏の域となる。ルート図を見ながらある程度のめぼしをつけて話し合う。
 ブッシュの中を私が先行した。浮き石が多いので慎重に基部を右へ進む。30mほどで、左に白いスラブ、右に黒いスラブが見えてきた。ルート図から判断して、左が「2.5スラブ」、右が「第3スラブ」だと思い、後続の小松の親分に続いて来てもらった。日影になる基部は寒く、薄いクライミングシューズなので足先がジンジンしたきた。(-_-#)

  
1P/VI級に取り付く

 第3スラブルート/3P/VI級の登攀が始まった。少し縦の段違いに平行して直上するように登る。傾斜が増し、ホールドが消えた所でリードする小松の親分の動きが止まった。ビレーしながら、覚えているルート図を伝える。「しばらく行くと左に少しトラバースして、また直上になっているよ!」と、何度も確認の意味で声をかける。もちろん、私は登ったことも見たことも無いわけであるから、最終的には今とりついている小松の親分の判断でルート取りがされるのである。左に体を移し何度もスタンスを入れ替えている。20分以上が経過した。ビレーしている私も日影の寒さで手先に感覚が無くなってきているのを感じていた。おそらく登攀中の彼は、浅いスタンスと乏しいホールドで、あれだけ耐えていたら辛いのは当然だと思う。意を決して、左足をちょっとした窪みにスメアで立ち込み、右足を入れ替えた。更に左足をキツイスラブに当てながら、左に離れたホールドに両手をかけて乗り込み切り抜けた。続く私は、トップロープ状態だから成せるムーブで、落ちる事覚悟で両足スメアでずり落ちながら立ち込んで登った。なんとも厳しいルートだと思った。もちろんA0、でもぎりぎりの登攀だった。休めない狭いテラスでピッチを切る。

1P、いよいよ核心手前 核心を乗り切った・・・
  
  
2Pを見上げる・・・何がなんだか「岩」だけ・・これしか写せない所に立っている(@_@)

 続く4P/VI-級も、傾斜のきつい浅いコーナーから始まる。コーナーを利用してステミングで立ち込む。短足には辛く、耐えきれず左足はボルトを踏む。フレークをアンダーで持ちながらずり上がると、フレークの中にスタンスが取れる。俄然キツイ傾斜に剥がされそうになりながらフレークの上に這い上がると、浅い段違いを乗り越さなくてはならない。ヒィーヒィー言いながら藪山流表現をチト真似てみた(^_^ゞ)乗り上がっていくと傾斜が落ちる。安定したテラスが2Pの終了点、一息入れなくては次ぎへ向かう力が出ない。素晴らしい青空、そしてパノラマ・・・、加えてスパッと切れ落ちた足下の絶壁・・・良くこんな所を登って来れたものだと怖さを伴う変な満足感もある。

傾斜がきつくて下が見えない(^o^;) 4Pの終了点より見る 
5Pの核心、ハングへ 切り抜けたヾ(^^ )

 5P/V級、今までの傾斜からすると格段に落ちた傾斜でホールド・スタンスも豊富に見える。行動食をパクつきながら、気になるのは「ハングの乗り越し」だけである。小松の親分が取り付くとロープはサラサラとルベルソ(確保器)から出ていき、ハング下でピタッと止まった。意外に苦戦を強いられている。一度左に出ていき、かぶりのきつさに戻っては抜け口を見つけようとしている。下から良さそうなところをコールするが、そこまで行かないと判らぬ無責任なコールなのかも知れないと思った。しかし、チームとして初見のトライなのである。アドバイスと言っても良い気もする。ピン位置は、私の言うところが正解だった。しかし、左手をハング下のクラックにアンダーで持ちながら、逆層で右手がどこにもかからない。何度か探って浅いホールドを頼りに、切り抜けた。フォーローの私はムーブを見ているので、案外簡単に乗り越せた・・・と言えば格好良いが、怖くて左手がピンを掴んでいた。

  

 6P/IV−級45m、ハイハイと手を上げてリードを申し出る水流ちゃんルートである。程良い傾斜と豊富なホールド、ただし30mのランナウトq(-_-)bad!!は覚悟しなくてはいけない。立木で確保。今までのキツイ登攀で、足の腹と足首が痛くて仕方ない。満足感がじわじわこみ上げて来始めた。小松の親分を迎えると、そのまま最終ピッチを登り上がってもらう。途中、ロープ一杯になり、私が10mほど上がるが、少しうるさい立木混じりのブッシュなので下まで落ちることもあるまい。岩稜の下降路への道に登り上がり、登攀終了。いつもより強い握手を交わして記念撮影。
 ロープのみまとめ、クライミングシューズのまま下降路を目指す。下降路の側にある比叡山石柱の立つ展望所で遅い昼食を始める。珍しく山岳会の会長から携帯に電話が入る。「あの核心の1P、左トラバースはどうだったか?」と聞かれ、リードした小松の親分への誉め言葉をいただいた。2人で初見ルートへの挑戦は、来年も地道に続けて行こうと話し合う。


展望所から眺めはすこぶる良い(^-^)
今日は、空気が澄んでいるので、噴煙上がる阿蘇山もみえていた・・・
もっと良い気分なのは、厳しかった登攀から開放された安堵感と、とびきりの満足感である。
 

 帰路、あのレジオネラ菌騒動で閉鎖していた日向市の「日向サンパーク/お舟出の湯」へ立ち寄る。営業再開していた。太平洋を眺めながら露天プロに浸かり、小松の親分と、今年を振り返った。来年も、お互いの「初見・初挑戦ルートクライミング」を続けていこうと約束した。

 
登山日記のページへ

6:30自宅発----7:05都農神社----9:20駐車場----9:30取り付き---10:30スラ基部----14:00終了点-----休憩------14:30下山開始------15:10下山終了----16:40お舟出の湯----18:20自宅着

 Copyright (C) 水流渓人 All Rights Reserved  

BACK

inserted by FC2 system