水流渓人「hot-news」

2003年7月2日 「比叡山/第一スラブ」宮崎県

 
 やっぱりな・・・(^_-)-☆

 
 前日の天気予報では、県北地方に「晴れ」のマークが点灯した。
 しかし、当日我が家の周辺は「雨」・・・、それでも川きょんは6時に現れた。ママの入れたコーヒーを飲みながら「それでも行くの?」「それでも行ってみないと判らない!」と、強気のGO宣言。川キョンの弁当までママは準備してくれた。
 車を走らせながら、日向市当たりから眺めた延岡方面の空は明るい。しかし、行縢山の方面にはしっかり雲が垂れている。道路は完全にウエットの状態で、槙峰を向かえいつもの鹿川沿いに登山口をめざした。「あー、やっぱり!」しっとりと艶やかにしみ出す岩場の水・・・、至る所ピカピカ光り輝く南面スラブである。
「んー、これじゃ無理かも・・・岩は止めて、鉾岳のツチビノキでも見に行こうか?」
などと、口だけはそう喋るが車の中で1時間近く居眠りをしてしまった。私は絶対聞いたことはないのだが「いびき」までかいていたそうだ。そんなはずはない。そんなはすは無いものはもう一つあった。目の前の岩場だ。1時間ぐらい居眠りしている間に「乾く?」・・・そんなはずは無いのである。
「これじゃ無理やね・・・。」
と言いつつ
「じゃ、挑戦だけして途中まで行ってみようか。」
とハーネスを付けた。
 身支度を整えて、一番乾きの早いといわれている『第1スラブ』の取り付きへ行った。駐車場からわずか1分とかからない。見上げれば、見た如くべったりと濡れている。クライミングシューズに履き替えて、そこかしことシューズの底でグリップを確かめるがぬるぬるしているだけである。内心は、ほとんどそこであきらめがついたのであるが、取り付きもせずに敗退も無いだろうと言う気持ちも内心ある。そうこうしている内に、じめじめした場所に大量の「藪蚊」が集結しはじめたのである。
  

T峰南面は、ベッタリ濡れている。 待機1時間、なんとか道路は乾いて?来た?
 

     取り付き・・・やっぱりなぁ・・・!    

 
 「薮蚊」と聞いて思考回路が炸裂するのは、私の特徴である。さっさとロープをセットして、とりあえずその場から立ち去ろうと取り付いてしまった。実に悪いスタンスニュルニュル、ホールドツルツルである。「沢靴をくれー!」「熊手をくれー!」と叫んでみたくなる。なんとか、2つ目の支点へプロテクションを取ったときに「なんとかなる。」と思った。それにしてもW級どころではない難易度となっている。ほとんど爪で登ったような感じだ。とにかく、まっすぐ立たないと滑り台となりそうな感じだった。
 

2P・3Pへ出ると、ようやくスラブの感触を味わえる。(^_^ゞ

 
 最初に出くわす立木にとりあえずビレーをとり、いつもの1Pの終了点までは行かずにとりあえずピッチを切る。いつもはなんてことないが、セカンドが滑ったら浮き石が楽石するかもしれない気がしたからだ。
ノーマルのカンテへ行くか、スーパーへ行くか相談する。相談しながら、私の体は苔の少ないスーパー側へ動いていた。大きいクラックを跨ぎ、左上していくのだが、今日はトラバースしてクラックを直上してみた。支点を1本飛ばすので、フレンズを使用する。なかなかいい感じでフリクションも効いてきた。登り上がってきた川キョンに、そのまま3Pをリードで上がってもらう。続いて私も登り上がって、そのまま4Pを登る。4Pはいつもは左に出て立木でビレーしていたが、その後の亀の甲スラブの基部まで確保無しに移動するより、右を抜けて平行ピンを迎えた方が安全だと思うのでさらに進む。見落とし?か判らないがルートをずいぶん右に行くので間に支点がないとずいぶん振られるなぁ・・・などと思うが、落ちる所でもない。
 


亀の甲スラブ手前のテラスにて、鹿川を見下ろす。
 

 亀の甲の基部でビレーしながら、体調の異変に気付く。「喉がかわいてたまらない・・・、腹がへってたまらない・・・。」と感じつつも、ここまで来てからと思っていたのだ。だが、その我慢は背中の筋がひきつり始めたのである。痛くて涙が出そうになる。川キョンが登り上がるまでロープは引き上げなければならない。歯をくいしばってなんとか持ちこたえた。これが「水分・餌切れ」が原因!との確証はないのだが、ポカリスエットをゴクゴク飲み、行動食の羊羹を食べたとたん、ウソのようにスーッと痛みが消えていったのである。

 

雲に包まれるニードル方面

 
 10分程度の休憩を取っていたら、正面の矢筈に雲がかかりはじめた。アッという間にニードルは雲でみえなくなり、下界も真っ白になった。そして、雨が降り始めた。もう、即決で「敗退・下山」だと決めた。
少しスムーズさに欠けるラッペル(懸垂下降)であるが、3回で取り付きに降りた。「こんな条件でもなんとか登ることが出来たのだから・・・。」と意見を合わせた。
遅めの昼食を食べ、「門川温泉」でゆっくり湯につかり帰途についた。

  

雨が降って来たモンねー(-。-;)

 取り付きへ降りてきた (~_~;)

 

  

 帰宅すると、子供達が宿題を始めていた。ママがあわただしく夕食の準備にとりかかっていた。どうしてだろう・・・・、こう言うときに遊び帰りの私は「申し訳ない」気分になり小さくなってしまうのは・・・・。私だけ遊んで申し訳ないという気持ちが強いのだろう。「ママ、コーヒーを入れてくれる?」と言いながら、自分で入れた。
 敗退したクライミングであったかもしれない。しかし、妙に満足感はあった。雨の岩場の怖さを体験できた。そして、慎重に安全にということに神経を集中できた。
 

 
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