水流渓人「hot-news」

2003年5月21日 「比叡山/T峰/1.5スラブ」宮崎県

●なんと、このレポートの「1.5スラの1P」は、「1スラ孫の1P」と言う事が
2004年5月12日の「2スラスーパー」のクライミングで判明した!
ちなみに、「1スラ孫の1P/VI-級」で「1.5スラの1P/VII+級」

 
 比叡山の南面スラブには、素晴らしいクライミングルートがある。初級ルートの中でも、第一スラブノーマル・第一スラブスーパーは、特に人気の高いコースである。ただ、岩の難易度に表示されるX級のルートが、ノーマルには3P目のカンテにX−、スーパーには上部の第2コブ岩横にX+と、いずれも1ヶ所ありも、いわゆる「核心部」なのである。
 今回は、小松の親分とたまたま休みが重なり、私の所用もあって少し遅めの集合時間となり、登山口駐車場が10時の到着となってしまった。取り付きで、「1.5スラ」という話が出たのである。ここのところ、小松の親分の熱の入れようは素晴らしく、第2コブ岩のX+級、第2スラブのX+級も初トライでリードを成功させている。彼にしてみればX+級の次は当然Y−級が課題であるのだが、問題は「水流渓人」自身である。X+級は当然セカンドで登らせてもらっているだけで、Y−級の世界は「知りません」の感覚である。リードが行く!と言えば、フォローは確実なビレイと続登するのみが使命で、取り付いたら何が何でもリードの待つ所に這い上がるのみである。
 1.5スラへ行くには、1スラと同じ取り付きの駐車場から1分の所・・・、比叡の南面は、「先楽後苦」か「先苦後楽」の法則・・・、つまりは先に取り付きに楽勝で行き、終了点からアヘアヘ歩いて下降路へ行くか、先に奧の岩場取り付きまでアヘアヘ登り、下降路に楽勝か・・・である。つまり、1.5スラは「先楽後苦」の位置であり、1スラが直上後左草付きへ45b行くのに対し、直上し平行ピンまで35b4級+平行ピンから直上後左草付きに45b4級を登ったところが、1.5スラ・2スラの取り付き基部となる。

 ■1.5スラのルート写真■
 

 少しこわばり気味に、小松の親分のリードで1Pを快適に登らせてもらう。リードがたぐるグイッグイッとする感覚が股間を刺激する。「股間を・・・」と言っても、そんな意味ではない。「そんな・・・」って「どんな?」とは思わない事である。この危険極まりない岩登りの世界で、リードの引くザイルの刺激や、リードする女性のお尻を下から眺め変な気分になれるのは、よほどの強者か、変人だと思う。運良く私は、小松の親分の引っ張るザイルの刺激に「そんな・・・」気分になることもなく、同級生コンビ・川キョンのお尻を見上げても「そんな・・・」気分にもならなくて良かった。しかし、女性の引き合いに登場してきた「川キョン」は、きっと喜んでいることと推測される。最近は、川キョンの休みも水曜が少なく、その分、会の山行や小松の親分と、腕を上げている。・・・・しかし、1Pのフォローの私が登るだけで「刺激」や「股間」や「川キョン」が登場するのだから、おかしなものである。今回の写真を写さなかったレポートなので、写真には写らない部分の描写でページを稼ごう・・・と見え見えな書き出しでもあるとつくづく思う。
 1Pの終了から、そのまま私がリードで直上し2Pを登る。この時点で、初めて私は2スラ・1.5スラの「核心」となる1スラノーマルのカンテ右の傾斜のキツイスラブを見た。右から2スラノーマルの核心となるX+級ルート、真ん中に2スラスーパーのZ級ルート(@_@)、そして左端にT.5スラのY−級である。どれを見てもその傾斜とピン間隔の狭さが、恐怖心を増す。どう見ても、ホールドやスタンスは見えてこない。下手で経験の浅さがそうさせているのだろうか?見上げるほどに、スッキリとしたスラブにピンだけがルートを導いている。
 
 3Pより1.5スラへ入る。1.5スラはここの2ピッチだけで、その後は1スラか2スラを登って終了点を迎えるのである。いよいよ、「行きます。」と小松の親分が取り付く、初めてのトライだが、見ていて無駄のない動きである。ヌンチャクのセットとロープクリップがとても素早い。ムーブとレストが上手い。ルート図終了点では見えなくなるので、直上30b当たりの平行ピンでピッチを切る。
 続いて私が行く。出だしから傾斜はきついが、フレークにガッチリホールドをとれる。最初のピン当たりでフレークがなくなり、細かいスタンスで耐え、細かいホールドで上を目指す。パンプしないように、フォールしないようにと意識はあるのだが、この傾斜は初めて味わう感じだ。なんとか体を離してスタンスを確認するが、ズリそうな怖さが頭一杯になり、ピンに立つヌンチャクを握り何でもありで、なんとかビレー点に到達した。Y−と書かれたルートを初めて体験した。感想は・・・?「ん?登らせていただきました。リードは無理でしょう。ヒビッたぁ・・・けど、満足感で一杯です。」って感じで後を振り返った。トイレ横の駐車場に自衛隊の車両が駐車し、隊員さんが見上げていた。もちろん手を振る余裕も無く・・・と言うより、ここでふざけて大変なことになったら、たぶん彼らは演習?訓練?目的で来られて入るであろうし、ひょっとしたら遭難者救助訓練?などと思ったら、お世話かけるわけにはいかないぞ!と気が引き締まる感じがした。

  
 

 ショートにピッチを切ったので、本来の終了点へずり上がる。「ずり上がる???」この言葉は、私の登攀の様子にふさわしい様な気がする。決して格好良くは無いことは良く判る。「ずり上がる」と、通常表現されているのは、難しい部分「核心部」の登りの所などで良く使われている言葉だが、私はほとんどそんな感じでズリズラーパパパヤーってな感じだと思う。しかし、ここは右の草混じりに逃げようとしたら傾斜はきつくなり、土は滑るはで嫌らしいことこの上なしであった。
 続いて、T.5スラの2P目はW級となっている。喜び勇んで私がリードさせてもらうが、傾斜も緩く階段状に見えたルートも、立木手前で傾斜が増し、あまり登られていない証明の苔が乾いてポロポロとなり、何とか右手で根を掴み左手でシュリンゲを回して支点を作り這い上がりピッチを切る。上がってきた小松の親分には、そのまま直上してもらい、見えなくなった上から「1スラスーパーへ入ります。」と聞こえてきた。
 私が登ると変な草付きから、見たことのあるようなフレークがかぶったビレー点である。よく見ると、1スラの亀の甲スラブの上、W+のピッチで、いつもは2ピッチを一度に登る所の中間点であった。
 続いてのW級を快適に登り上がると、第二コブ岩下のテラスである。ここで、小休止をとる。腹もカンカンに空いているが、次の1スラスーパーの核心X+を前にして、弁当は少し落ち着かない。とりあえず、水分補給とバナナ程度の行動食にしてもらう。
 思い出せば、ここのピッチは去年の秋、長崎の山の会の方達と合同クライミングの際、X+初リード初トライでフォールしたところだ。先月、初めて小松の親分のリードで登らせてもらい、やっぱり実力不足を感じたが、今年中にはリードを成功させたいと思ってはいる。そして、今回、このピッチを目の前にして、あっけなくリードを小松の親分に譲ってしまった。「譲った」というと誤解があってはいけない。今回のクライミングのリーダーは間違いなく小松の親分であり、1.5スラのY−という私の実力では行くことも出来ない所を登らせていただいている。「行きます。」と言えば「お願いします。」が筋である。本音としては、「どうぞ」と言われたら辞退したかも知れない・・・・。でも今年中には「やるぞ!」と目標にしてはいるのだ。
 トラバース気味にテラスに立つ。小松の親分は直上でフェース中央を突破したが、私は簡単に裏側から回り込む易しい方からフェースに出る。2回目となると、いくぶん気持ちも落ち着いてホールドスタンスを見つけられる。Y−を体験後のX+なので、傾斜に対する恐怖心は少しやわらいではいたが、いずれにせよ核心部は細かい。本来、右のピン近くの細かいホールドに耐え、左のホールド?ポケットというのだろうか?・・・そこに左のスタンスを取れれば、核心部は終わる。しかし、今回も右のピンに立ってしまった。

 

 後は、階段状にグイグイ登ってビレーしている小松の親分を通り過ぎ、草付きを左に行き最終ピッチの基部にセット完了。すぐ下が、1スラノーマルのコースであるが、最近はコース横の第2コブ岩にボルトが打たれ新しいルート??が出来ている様である。いかんせん、その傾斜を見れば、凄く難しそうであるのは私でも判る。
 先に終了点を迎えた小松の親分に引かれるザイルに従い私も登る。いつも最終ピッチは左側に易しく登るが、今日は右を通ってみた。いつも、難しそうな感じでみていたが、セカンドの時こそ挑戦のチャンス、行けばなんともなく登れた。
 オッサン2人、苦笑いしながら「握手」・・・日陰で遅い昼食を取りながら、「来週はどこを登りましょうか?」などと鼻息荒い小松の親分である。でも、しばらくのブランクを経て再開した小松の親分のクライミングであるが、練習と熱意・・・素晴らしいと思っている。あやかっている自分は嬉しいばかりだが、いつかはたくさんの先輩を私のリードで楽させてあげたいなぁ・・・・・なんて生意気なことも思ったりした。

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